更年期以降増える子宮体がん。近年は年齢に関係なく増加傾向

一般の「子宮がん検診」に体がんの検査は含まれない。リスクの高まる40歳代以降は、検診時に相談を
子宮体がんの現状
子宮頸がんが20歳代後半から30歳代後半に多いのに対し、子宮体がんは50歳代~60歳代に多いがんです。また近年は、年齢に関係なく子宮体がんは増加傾向にあります。
国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、1年間で子宮体がんで亡くなる方は約1,600人と推測されています(2009年データ)。これは子宮がん全体の約3割にあたります。生涯で子宮体がんにかかるリスクは、女性103人に1人(2005年データ)、子宮体がんで死亡するリスクは、女性543人に1人(2009年データ)と発表されています。
年代別の罹患率をみると、40歳代から増え始め、50歳代後半から60歳代前半にピークを迎えます。死亡率をみると、50歳代から急上昇し、高齢になるほど高くなります。
子宮体がんは、比較的初期のうちから不正出血やおりものの異常、下腹部の痛みなどの症状が見られますが、検診や婦人科医療から遠ざかっているとその異変を放置し、結果的に発見が遅くなってしまうことがあります。
そこで、早期発見のために、まず一般的な子宮がん検診を定期的に受け、ちょっとした不正出血などの変化も医師に相談するようにしておくとよいのです。
子宮体がんのリスク要因
子宮体がんは子宮の奥のほうの部分(体部)の内膜から発症するがんで「子宮内膜がん」とも言います。月経サイクルが順調なとき、子宮内膜は卵胞ホルモンの分泌によって周期的に厚くなり、排卵後約2週間たつとはがれ落ちて薄くなります(妊娠しなかった場合)。ところが、40歳代以降に卵巣の働きに不調が起こり始めると、厚くなった子宮内膜がうまくはがれにくくなり、がん発生の素地となる子宮内膜増殖症が起こりやすくなります。
特に閉経年齢が遅い、妊娠・出産経験がない、肥満、エストロゲン依存性の乳がんを経験した、などにあてはまる人では子宮体がんのリスクが高いといえます。
また、乳がんのホルモン療法でタモキシフェン製剤を使っていた場合や、糖尿病、高血圧、乳がん・大腸がんの家族歴との関連も指摘されています。
過去に行われていた、黄体ホルモンを併用せずエストロゲン単独療法を長く続けるホルモン補充療法では、子宮体がんのリスクが高くなることが知られています。逆に、黄体ホルモンを併用するホルモン補充療法や経口避妊薬(OC)の使用では、子宮体がんのリスクは下がるとされています。
子宮体がんの主な検査
一般に地域検診や職域検診での「子宮がん検診」で行われているのは子宮頸がんの検査で、子宮体がんの検査は含まれません。「子宮がん検診」時に問診によって医師が必要と判断した場合は、子宮体がんの検診(子宮体部細胞診)も同時に行われます。そこでリスクの高まる40歳代以降は、検診時に体がんの検査も行うかどうかを医師に相談するとよいでしょう。
なお、一般的に婦人科検診は、正確な診断が行われるために月経出血がないときに受けましょう。気になる出血があるときは、婦人科検診ではなく、出血が止まるのを待たずすぐに医療機関を受診し、検査を受けることが大切です。
●問診・内診
まず出血や下腹部の痛みなどがないかを問診によって確認します。医学的には、褐色がかったおりものや、スポッティングと言われるほんのわずかな点状の出血も不正出血とみなします。
また、内診では腟内に手指を挿入し、子宮の形状や大小の変化を調べます。同時に経腟超音波検査も行います。

●経腟超音波検査
体内に超音波を送り、はね返ってくる反射波(エコー)を検出することで体内の情報を画像化するしくみです。子宮がん検診では細長い超音波検査具(プローブ)を腟内に挿入し、子宮内や卵巣のようすを至近距離から映像で見ることができます。
体への侵襲性はなく、婦人科では日常的に行われる検査です。
●子宮鏡診(ヒステロスコピー)
腟より子宮内部に内視鏡を入れ、子宮内腔を観察する検査です。子宮鏡には硬性型と軟性型の2種類がありますが、現在では軟性型のヒステロファイバースコープが普及しています。原理は胃カメラと同じで、子宮の中に炭酸ガスや生理食塩水を入れて子宮をふくらませながら観察します。スコープの直径が約3mm程度で細くやわらかいため、検査に伴う痛みは少なく麻酔も必要ないことがほとんどです。
●細胞診
子宮体がんは子宮頸管の奥の体部にできるため、子宮頸がんの細胞診では見つけることができません。体がんの細胞診には、細長いへら状の器具を子宮の奥に入れて内膜表面の細胞をこすり取る擦過(さっか)法と、先に穴のあいた細い管を子宮の奥に入れて内膜の細胞を吸い取る吸引法があります。
ただし、子宮体部でがんのできる範囲は広いため、必ずしも採取した部位の細胞にがんが見つかるとは限りません。このため、子宮体がんの細胞診の精度は80%程度と言われます。子宮体がんの細胞診はおおむね「陰性」「疑陽性」「陽性」の3つで示されますが、検査の結果が陰性であっても、出血や痛みが続く場合は、組織診を行うこともあります。
●組織診
細胞診が疑陽性か陽性の場合に、精密検査として組織診が行われます。キューレットという器具を子宮の奥に入れて内膜組織をかき取り、顕微鏡検査を行います。このため、人によっては痛みが伴うことがあり、また検査後に出血が1~数日続くことがあります。
普通は外来で麻酔をかけずに行いますが、痛みが強いときや、細胞診でがんが疑われたが外来の組織診では異常が見られなかったというときは、入院して麻酔下で子宮内膜の掻爬(そうは:かき取ること)を行う場合もあります。体にかかる負担はありますが精度が高く、子宮体がんの確定診断には外すことのできない検査です。
【血液検査】
●腫瘍マーカー
腫瘍マーカーとは、体内にがんが存在すると血液中に大量に増える物質をいいます。子宮体がんでは主にCA125という物質が利用されますが、がんを発見するためにはあまり有用とはいえず、治療前と治療後の数値の変化によって治療効果や再発の可能性を推測するおおよその目安として用いられています。
【画像検査】
がんが確定した場合、さらに下記のような画像検査を行い、進行度や体の他の部位への広がりを調べる必要があります。
子宮は骨盤の中にあり、そのまわりには卵巣、腸や膀胱など他の臓器があります。子宮体がんは子宮内膜から発生するがんですが、それが子宮の筋層や子宮の外側、卵巣、腸などに浸潤していないかという診断に経腟超音波検査(前述)、CT、MRIなどの画像検査は大変有効な手段となります。
なお、子宮体がんの病期分類は、手術後に病理検査を行った結果により決められます。
●腹部超音波検査(エコー検査)
プローブという装置を直接下腹部に当てて超音波を発射し、はね返ってきた反射波を検出してモニターに映し出し、体内の様子を調べる検査です。
●CT検査
コンピューター断層撮影検査ともいいます。X線を体の外周から照射し、組織に吸収されたX線量をコンピューターで処理し、体内の断層像(輪切り像)を描き出す画像検査です。
●MRI検査
磁気共鳴画像検査ともいいます。体に強い電磁波を作用させることで、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化する検査です。画像の鮮明さでは内視鏡やCTより優れているため、子宮体がんの広がり(筋層や頸部への浸潤など)をつぶさに見ていくのに適しており、手術の範囲や治療方法を決めるためにも有用な検査となっています。
●胸部単純X線検査
一般の診療や健診などでも行われるよく知られている検査で、レントゲン検査とも呼ばれます。特にがんの場合は肺への転移の有無を調べるために行う検査です。ただし、この検査だけで小さな病変を見つけることは難しく、CTなどの画像検査や血液検査、組織診などを併用する必要があります。
●骨シンチグラム検査(アイソトープ検査)
骨への転移の有無を調べる検査法です。ごく微量のアイソトープ(放射性同位元素)を血液内に注入し、それが組織に集積する様子をガンマ線カメラで撮影します。骨折や炎症、がんの転移などで、骨の再生が活発に起きている箇所にアイソトープが集積する性質を利用しています。