健康で美しい歯とは? 噛み合わせが悪いとなぜいけないのか

健康な歯をしている人は、実は見た目も美しい

歯列とかみ合わせの乱れは歯の病気や体の不調の原因となる。歯の「機能美」を保つことで歯の健康を守ろう

健康な歯は、見た目が美しく機能的にも優れている

 健康な歯をしている人は、実は見た目も自然と美しくなります。ここでいう「美しい」とは、つくられた美しさではなく、自然な美しさのことをいいます。自然な美しさは、実は「機能美」でもあります。この「機能美」が確立されていないと、顎関節症、歯ぎしり、歯周病、むし歯、ひいては肩こり、不眠症や自律神経失調症などさまざまな病気や不調の原因になることがわかっています。ここでは、かみ合わせも含めた歯の「機能美」の重要性と、それに関連して何かと話題になるインプラント治療や先進医療についてお話したいと思います。

 前歯は笑ったとき最もよく見える歯であるため、前歯の「機能美」はその方の第一印象を左右します。下の写真を見てみましょう。

 歯は、表面をエナメル質で覆われた歯冠の部分が、歯周組織(歯茎や歯を支えている骨)から立ち上がっています。歯周組織が健康な場合、セメント質と呼ばれる歯根の部分は歯茎から見えることはなく、歯肉はきれいなピンク色をして、スティップリングと呼ばれる小さな粒状の凹みが数カ所に認められます。歯と歯は先端から3分の1くらいの位置で接触し、そこに向かって歯間乳頭と呼ばれる三角形状の歯茎が伸びて埋めつくされ、歯と歯の間には隙間がないようにできています。

 この形態によって、食べ物の残りかすを洗い流す唾液が流れやすくなっており、それはまた歯磨きもしやすいということになります。歯と歯に隙間があると食べ物が詰まりやすくなります。歯茎が赤くなったり腫れていたり出血しやすくなっているということは、歯茎の中で炎症が起きている信号ということになります。

かみ合わせのズレが、顎関節症、歯ぎしり、歯の崩壊の原因に

 上の歯は上顎から生えており、下の歯は下顎から生えています。つまり上顎と上の歯列は一体化しており、下顎と下の歯列は一体化しています。そして上顎と下顎は顎関節と呼ばれる関節で接しており、咬筋(こうきん)や側頭筋という強力な筋肉によって上顎から下顎がぶら下がっています。この顎関節が安定した位置で上下の全ての歯がぴったりとかんでいることがとても重要となります。

 ところが、顎関節が楽な位置で上下の歯を自然に近づけたとき、どこかの歯が最初にぶつかってしまい、ほかの歯がかみ合わなくなっていることがあります。これを早期接触といいますが、患者さん自身で意識して確認するのは難しいため、熟練した歯科医師が確認します。このような状態にある患者さんは、顎関節の楽な位置と、全体の上下の歯同士がピッタリかみ合う位置がズレていることになります。そのため歯全体がかみ込むと、顎関節が奥に押し込まれたり、咬筋や側頭筋のような顎にくっついている筋肉は常に無理なねじれの力を受けることとなります。

 顎関節が奥に押し込まれると、神経や毛細血管が常に圧迫を受けるため「顎関節部の痛み」「顎がカクッとなる」「口が開かない」などの症状となって現れる場合があります。咬筋や側頭筋にねじれの力が常に加わると、毎日筋肉トレーニングをし続けているようなものですから、筋肉がこわばり、首や肩の筋肉のバランスにも影響します。また、歯ぎしりや不眠症を起こし、結果として自律神経が緊張したままとなって体調の乱れが生じます。
 また、日常のストレスはこの緊張をさらに強め、特にパソコンや携帯電話をよく使う人や常に忙しい人などにこの傾向が顕著です。しかし、患者さんによって症状の現れ方はさまざまです。

 下の写真の患者さんは、かみ合わせを含めた審美治療を行っています。実は、初めの前歯の写真も、次に出てくる前歯と奥歯の写真も同じ患者さんのもので、前歯や奥歯すべてセラミックにより治療された治療後の口腔内写真なのです。
 下の写真を見ると、治療前と治療後では、表情筋の緊張が取れてスマイルラインに変化が起きているのがわかります。このことからも、顎の楽な位置に歯のかみ合わせが一致することの重要性が見受けられます。

前歯と奥歯はお互いに守り合っている

 歯は、正常であれば親知らずを除いて28本あります。上の歯が14本、下の歯が14本で合計28本です。真ん中を中心にして左右対称に前から中切歯、側切歯、犬歯といういわゆる前歯の部分と、その奥に存在する2本の小臼歯と2本の大臼歯といういわゆる奥歯が存在します。これらすべての歯の形には意味があります。

 奥歯は顎関節に近い位置に生えていて、直接筋肉の力を受け止めるためかむ面が広く、根が2~3本あります。根が複数あるということは、広い表面積で力を分散でき、縦にまっすぐに伸しかかる力に対して奥歯がそれを受け止めることによって前歯が崩壊するのを防いでいます。奥歯が抜けたまま放置してしまうと、前歯の崩壊するスピードが早くなってしまうというケースを多々見かけます。

 ただし、奥歯は横からの力には弱いのです。なぜならば、根は複数あるものの長さは短かく、横から受けた力に対しては一部の面積で受け止めるため、短い根は不利ということになります。
 それに比べると、前歯(特に犬歯)は根が長くできており、横からの力には強くできています。また、顎関節から遠い位置に存在し、てこの原理から、かかる力の負担が奥歯の2分の1から3分の1しかありません。つまり、まっすぐかむときには奥歯が前歯を守り、横に動かした際には前歯(特に犬歯)が最初に当たってガイドをしてくれることによって、奥歯にかかる力の負担を制御しているということになります。

清掃性とかみ合わせを考えたインプラント治療と先進医療

 昨今、インプラント治療はいろいろな意味で話題となることが多く、インプラントについてご存知の方も多いと思います。前述したように、天然の歯が機能的に美しいことにはいろいろな意味があるように、インプラント治療でも「機能美」を与えることが重要となります。インプラントで天然の歯に近い色合いや形態を与えることにより、患者さんは思いっきり笑うことができ、食べ物が詰まることもなく、磨きやすいため細菌による炎症も起きにくくなります。

 また、インプラントは一度埋め込むと二度と埋め込みの位置を変えることができません。つまり、埋め込みの手術を行う前に、かみ合わせのチェックをしっかり行い「なぜその歯がだめになってしまったのか?」ということを事前に把握しなければ、またそのインプラントに同じような力(負担)が伸しかかり、ゆくゆくは破壊に陥ってしまうことになります。
 その原因を取り除き、清掃性とかみ合わせを考えたインプラント治療を行うことが、患者さんの将来を考えた本来あるべきインプラント治療であると私は考えます。

 また、近年は歯周組織再生誘導法などの先進医療を用いることにより、かつては抜歯と言われた歯でも保存可能となる場合があります。この場合も、実はその歯が病気に陥ってしまった原因を取り除くことが重要となります。
 これからの歯科医療は、見た目も美しくかみ合せも清掃性も考えられた「機能美」を獲得することにより、いつまでも健康な歯でいられることを可能にするでしょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
中村 茂人先生


デンタルクリニック アレーズ銀座院長
日本大学松戸歯学部卒業。日本臨床歯周病学会会員、Society of Japan Clinical Dentistry会員、Osseointegration studyclub of Japan会員、International Team for Implantology メンバー。一つの歯で考えるのではなく口腔内全体を一単位と考え、顎関節から咬合そして歯へと全体的に評価をし、審美的で永続性のある治療を心がけている。年に数回あらゆる学会での症例発表を繰り返し、新人賞、最優秀賞も受賞。

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