目のつくりと物が見えるメカニズム-近視や老眼はなぜ起こる?

目のつくりとものが見えるメカニズムはカメラにたとえられる

情報の約80%を受け取る感覚器官。近視や遠視は屈折異常。目の酷使や加齢によって起こる病気が増えている

3層の膜で包まれている眼球

 目は光によってものの色や形、遠近、動きなどを感じる感覚器官です。私たちは五感を使って外界の情報をキャッチしていますが、なかでも目(視覚)は、情報全体の約80%を捉えるといわれます。耳(聴覚)は声や物音、鼻(嗅覚=きゅうかく)はにおい、舌(味覚)は味や温度、皮膚(触角)は物の手触りや重さ、温度などの情報をキャッチしますが、その前後に必ず見て確かめようとします。つまり、目は私たちが最も頼りにするセンサーといえます。

 ものを見るという役目を担うのは眼球と視神経です。眼球は頭蓋骨(ずがいこつ)に左右にくりぬかれた眼窩(がんか)の中に収まっていて、前はまぶた、後ろは脂肪のクッションで保護され、視神経によって脳につながっています。また、眼球は外側から外膜、中膜、内膜と3層の膜で包まれ、その中に水晶体と硝子体(しょうしたい)、眼房水(がんぼうすい)が入っていて、ここを光が通過していきます。

●外膜…線維の多い丈夫な膜で、前からみて後方の約5/6は強膜(きょうまく)といい、白色不透明でいわゆる白目です。前方の約1/6は角膜(かくまく)といい、黒目に当たります。角膜は本来透明な膜なのですが、下の虹彩(こうさい)の色が透けて見えています。

●中膜…血管とメラニン色素の多い膜で、後方の脈絡膜(みゃくらくまく)と、前方で水晶体を輪のように取り巻く毛様体(もうようたい)、さらに毛様体の前端にあって水晶体を取り囲む虹彩から成ります。
 虹彩は色素や血管、神経などの多いドーナツ状の膜で、穴の部分は瞳孔(どうこう)といいます。暗いときには瞳孔を広げ、明るいと逆に狭めて入ってくる光の量を調節しています。虹彩の色は、色素細胞が多い日本人は茶褐色、色素細胞が少ない白人は青色や灰色に見えます。

●内膜…眼球壁の最も内側で網膜(もうまく)があり、後方で視神経とつながっています。網膜は軟らかくて剥離(はくり)しやすい膜です。

眼球は、副眼器に働きを助けられ保護されている

 眼球の働きを助け保護する、まぶた(眼瞼=がんけん)や結膜、眼筋などは副眼器と呼ばれます。

●まぶた…眼球の前にある皮膚のひだで、開けたり閉じたりして眼球の保護や光の刺激を遮断します。

●結膜…眼球の前の部分の表面を覆う粘膜で、まぶたがスムースに動くようにする働きがあります。

●眼筋…直筋、斜筋といった6種類の筋肉がついていて、眼球を眼窩に固定するとともに、上下左右見たい方向へ眼球を素早く動かしたり、ゆっくり動かしたりします。

●涙腺(るいせん)…眼球の少し上、目尻寄りにあって涙を分泌します。涙は悲しさ、嬉しさ、悔しさなどの感情で分泌されるだけでなく、目がさめている間は常に分泌されています。まぶたと角膜の間の潤滑油の役割を果たすとともに、眼球の表面の異物を押し流し、乾燥を防ぐなどの働きをしています。

水晶体でピントを調整、網膜で像を結び、脳に伝わる

 目のつくりとものを見るメカニズムは、カメラにたとえられます。

●シャッター、フィルター…眼球の前にあるまぶたは、カメラのシャッターに当たります。次に角膜は、レンズを保護する透明なフィルターでしょう。

●絞り…角膜を通過した光は、絞りに相当する虹彩でその量が調節され、水晶体に入ります。

●レンズ…角膜はフィルターであると同時に、光を屈折させるレンズでもあります。
 水晶体もレンズです。両面が凸レンズ状で無色透明、弾力性があり、ここでピント合わせが自動的に行われます。見る対象への距離が近ければ、毛様体筋が緊張して水晶体を引っ張っている毛様体小帯が緩み、水晶体中央部の厚みが増してピントが合います。逆に遠くのものを見るときは、水晶体は引っ張られて薄くなり、遠くのものにピントが合います。

●フィルム…水晶体を通過した光は無色透明・ゼリー状の硝子体を通って網膜に達します。光と色を感知する視細胞が集まる網膜は画像素子(フィルム)に当たります。ここでは画像の明暗、形、色が感知され、その情報が視神経を経由して大脳皮質の視覚野という部分に伝わります。ここで情報が統合され、「見る」という行為が成立します。

ピントが合わない屈折異常、目の酷使や加齢による病気も

 光の屈折の角度が正常で、網膜上にピントの合った画像を結ぶ場合を正視といいます。しかし、屈折率が狂って網膜の手前や後方で像が結ばれ、ピントが合わないことがあり、これを屈折異常といいます。

●近視…眼球が前後に長いか、光の屈折力が強すぎて、網膜の手前でピントが合ってしまう状態。近くのものにはピントが合いますが、遠くのものはぼやけて見えます。凹レンズで矯正します。

●遠視…眼球が前後に短いか、光の屈折力が弱すぎるため網膜の後ろでピントが合い、遠くも近くもはっきり見えません。凸レンズで矯正します。

●乱視…角膜か水晶体の縦と横の屈折力に差があるか、角膜の表面にゆがみがあると、光がいろいろな方向に屈折し、網膜の上にはっきりした像を結ぶことができません。

●老眼…加齢とともに水晶体が弾力を失い、ピント調節がしにくくなって近くのものが見えにくい状態。凸レンズで矯正します。

 屈折異常のほか、目の酷使や加齢によって起こる異常もあります。

●眼精疲労…原因はさまざまですが、パソコンやスマートフォンなどのディスプレイ画面の見過ぎなどによるものも増えています。目の疲れがひどく、痛みやかすみ目、充血などのほか、頭痛、肩こり、吐き気、嘔吐(おうと)なども現れることがあります。

●ドライアイ…これも現代人に多い目が乾くというトラブル。目が疲れる・ゴロゴロする・充血するなどの症状が現れます。涙の分泌量の不足や涙の質の変化などが要因として指摘されています。特にパソコン作業中は画面を凝視するためまばたきの回数が減り、目の表面が乾く原因になります。

●緑内障…眼房水の流れが悪くなって眼球内の圧力が上がり、視神経が圧迫されて視野が欠ける病気。片方の目の視野が欠けても、もう一方の目が補うので気づきにくい。重症化すると失明の危険があり、日本では成人の失明原因の第1位になっています。

●加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)…網膜の中心にある黄斑が障害され、視野の中心がゆがむ・ぼやける・薄暗いなどの見え方をします。加齢のほか、脂質の多い食生活などが原因とされています。

●白内障…主に加齢のために水晶体が白く濁り、光の通過が妨げられて視力が落ちる病気。老眼と勘違いして発見が遅れることがあり、症状が進むと外から見ても水晶体が白く濁っていることがわかるようになります。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
内野 美樹先生


両国眼科クリニック元院長
2001年慶應義塾大学医学部眼科学教室入局。立川共済病院、国立埼玉病院を経て、03年より慶應義塾大学医学部助手、06年両国眼科クリニック院長、12年ハーバード大学医学部マサチューセッツ眼耳鼻科病院およびハーバード大学公衆衛生大学院に留学中。専門はドライアイ。日本におけるドライアイについての疫学研究の第一人者であり、日本におけるドライアイの有病率、パソコンの使用時間とドライアイの関係について世界で初めて証明した。現在ハーバード大学公衆衛生大学院で世界的な研究者と共同研究を行っている。実生活では、2児の母でもある。

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