肩こり・首の痛みに効く漢方と養生法

つらい「肩こり・首の痛み」改善-漢方医学、西洋医学での対処法

血行を促して症状を改善



  • 出典:株式会社法研「女子漢方」
  • 著者:矢久保 修嗣 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 科長
  •    木下 優子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 外来医長
  •    上田 ゆき子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 救急担当医長


漢方医学の考え方

症状

肩こり・首の痛みにはいろいろなタイプがありますが、漢方では、気や血の流れの滞りである気滞(き たい)、瘀血(お けつ)、が原因だと考えられています。また、冷えも、血の巡りを悪くして肩こりを起こす原因になります。

肩こりを放置したままでいると、気、血の滞りによって、頭痛やめまいなど、さらなる不調を引き起こす可能性があります。気、血の流れをよくする漢方薬や運動によって、体調はよくなり、肩こりも楽になります。

漢方処方

*急に肩こりがある場合

仕事が忙しくなるなど、環境の変化によって肩が急にこるようになったときには、血行をよくする漢方薬、葛根湯(かっ こん とう)が効果的です。

*ストレスが多く、冷えやのぼせがある場合

肩こりがあって、手足が冷えたり、頭がのぼせたりするようなときは、ストレスで気の流れが悪くなっている可能性があります。このような症状には、加味逍遥散(かみしょうようさん)が有効です。

*体が弱く、冷えやすく下半身にむくみがある場合

冷えやむくみを改善する作用がある当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を使います。

 首や肩を揉んでも痛みがとれないときは、足を揉んでみましょう。足裏に、首、肩の経絡に繋がるツボがあるためです。



西洋医学の考え方

症状

肩や首回り、背中がかたくなり、痛みがひどくなると、頭痛や吐き気を起こしたりする場合があります。このような肩こりは、筋肉の疲労により、血行が悪くなることで起こります。

こりや痛みがあると、筋肉が緊張して血行が悪くなり、こりがさらに悪化するという悪循環に陥るという状態が慢性的な肩こりです。

また、女性ホルモンの減少によって血行が悪くなり、肩がこる場合もあります。

対処法

血行をよくする必要があります。そのためには、長時間、同じ姿勢を続けることは避け、ストレッチや肩まわりをこまめに動かす体操をすることで、肩こりを予防・改善できます。 

また、痛みと緊張、こりの悪循環を断ち切るために、湿布や消炎鎮痛剤、筋弛緩剤の飲み薬などで症状を和らげる治療法もあります。同じ動きをしたときに痛みがあるときは、筋肉を痛めている可能性もあるので、整形外科を受診しましょう。


「肩こり」を食材で改善-気、血を巡らせる食材と運動で改善




いつも表に出ている肩はこりやすい

多くの場合、エアコンは室内の天井や上のほうに設置されています。そのため、冷房をかけている部屋では、たいてい冷気が当たるのは肩のあたりです。また、お風呂に浸かっているときや、布団をかけて寝ているときも、肩は外に出て冷えていることが多いものです。つまり、肩は常に冷えがちなのです。

冷えた肩の部位では、筋肉が固くなり、循環障害が起きています。循環障害とは、血液などの巡りが悪くなっていることで、漢方では気滞(き たい)、瘀血(お けつ)、水毒(すい どく)が関係します。

そのため、肩こりを改善する食材は、気や血を巡らせるものが中心になります。


急な肩こりがある場合

長時間のデスクワークなどで、急に肩がこるようになった場合には、血の巡りが悪くなっていると考えられますので、血流をよくする食材がおすすめです。

血管を広げ、血を巡らせる働きをする食材は、納豆、ニラ、菜の花、イワシ、ウナギなどです。

大豆のたんぱく質は、そのままの状態よりも、発酵させた納豆のほうが吸収されやすくなります。ネバネバしている部分は、ナットウキナーゼというたんぱく質分解酵素が含まれていて、血栓を予防する効果があります。つまり、血流を改善するので、肩こりの緩和にも役立ちます。

なお、朝に納豆を食べる人も多いと思いますが、血流は夜寝ている間のほうが滞りやすいので、夕食にとるほうが効果的です。


ストレスによる肩こりがある場合

ストレスと気は直結しています。気の滞りによって、血の巡りも悪くなり、肩こりが生じている場合は、気を巡らせる食材をおすすめします。

大根は、気の巡りを促す作用があり、胃腸の働きを高めます。生のままでは、涼性で体を冷やしますが、加熱すれば冷やすことはありません。

タマネギは、胃腸を温め、気の巡りを改善します。気の巡りがよくなると、体は温まり、肩のうっ血も解消されやすくなります。

また、ストレスには、柑橘類など酸味のある食材が効果的です。ミカンは、気の巡りをよくし、消化吸収を促します。抗酸化作用もあり、疲労回復にも繋がります。ミカンの皮を干したものは陳皮(ちん ぴ)と呼ばれ、漢方に用いられます。苦みが湿邪を除き、辛味が気を巡らせるなどの働きがあり、「百病に効く」とも言われます。

なお、気の滞りによって、冷えやのぼせが起こっている肩こりには、大根、タマネギ、ラッキョウ、紫蘇、鮭など、気の流れをよくし体を温める食材が有効です。


むくみを伴う肩こりの場合

むくみを伴う肩こりは、水分の代謝が悪くなっていることが原因と考えられます。体の水分バランスは五臓の腎が関係しているので、ハトムギ、黒豆、金針菜(きん しん さい)、ナズナ、スイカ、ブドウなど、利尿作用と腎を補う働きをもつ食材をとりましょう。

金針菜は、ホンカンゾウという花を乾燥させたもので、水分の代謝をよくする作用や、精神を安定させる作用があります。鉄分やカルシウムも豊富で、貧血や月経痛などにも効果があります。水で戻し、スープや炒め物などに用いるのが一般的です。味にくせもなく、中華食材のコーナーなどでも売られていて、とりいれやすい食材です。

*養生法

肩こり対策には、食事以上に、適度に体を動かすことが重要です。デスクワークが多い人は、常に同じ体勢でいることが多く、とくに筋肉がこわばっているので、ときどき肩をまわして肩周辺の筋肉をほぐすように意識しましょう。

なお、肩と、首や腰骨は連動しています。腰は骨格の要です。腰が不安定だと、体はその上の部分でバランスをとろうと無理をして、肩や首が痛くなることがあります。このような人は、腰痛の自覚症状はなくても、腰がこっていることがあります。ときどき、腰まわりのストレッチをするといいでしょう。

なお、肩こりがひどくなると、多くの人の姿勢は両肩が前に出た状態になります。すると、胃の働きが悪くなり、食べ物がつかえる感じがしたり、胸郭が開きにくくなって、呼吸が浅くなり、息苦しさを感じる人もいます。悪化してしまわないように、こまめにこりをほぐすことが肝心です。


肩こりのお助け食材

温性 納豆、黒砂糖、エシャロット、タマネギ、ニラ、パセリ、紫蘇、フキ、菜の花、金柑、桃、イワシ、カジキマグロ、鮭、栗、ジャスミン、ワイン、八角、カカオ
平性 玄米、小豆、黒豆、長ネギ、オクラ、チンゲンサイ、トウモロコシ、白菜、ブドウ、ウナギ、サンマ、シシャモ、サフラン、レモン
涼性・寒性 大根、ナス、金針菜、ミョウガ、ミカン、梨、グレープフルーツ、スイカ、マンゴー、アサリ

+αでいつもの食事が肩こり解消ご飯に

  • 薬味、和え物、サラダに紫蘇をプラス
  • 味噌汁の具を長ネギとニラに変更
  • スープに金針菜をプラス
  • カレーのご飯をサフランライスに
  • 緑茶はジャスミン茶にs

  • 季節別おすすめ食材とおかず

    春の食材 菜の花

    ●おかず
    菜の花のおひたし、アサリのスープ
    夏の食材 紫蘇、タマネギ、ニラ、オクラ、トウモロコシ、桃、スイカ、ウナギ

    ●おかず
    トウモロコシとオクラの炒め物、紫蘇ジュース、桃のコンポート
    秋の食材 ブドウ、サンマ、梨

    ●おかず
    金針菜のおひたし、鮭のムニエル、サンマの炊き込みご飯
    冬の食材 長ネギ、大根(加熱)、白菜、ミカン

    ●おかず
    大根と豚肉の炒め物、白菜スープ、ミカンジュース

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