便秘・下痢に効く漢方と養生法

つらい「便秘・下痢」改善-漢方医学、西洋医学での対処法

胃腸の働きを高め、快適なお通じを



  • 出典:株式会社法研「女子漢方」
  • 著者:矢久保 修嗣 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 科長
  •    木下 優子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 外来医長
  •    上田 ゆき子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 救急担当医長


漢方医学の考え方

症状

数日間排便がなく、膨満感などがあります。しかし、便通が3、4日に1回でも、便が固すぎず柔らかすぎず、排便時に苦痛を感じないようであれば、便秘とまでは言えません。

便は、小腸から運ばれた食べ物のカスを、大腸で、水分を吸収しながら排出されます。そのため便秘は、体内の水が不足すると起こりやすくなります。また、ストレスによる気逆(き ぎゃく)や瘀血(お けつ)も、便秘の原因になります。

一方の下痢は、消化不良、ストレスなどで、脾(ひ)や胃の働きが弱まり、便が柔らかくなっている状態です。

漢方処方

腸管を刺激して排便を促したり、腸を潤して、便を柔らかくして便秘の解消を目指します。

*慢性的な便秘の場合

腸の働きが低下している場合には、腸の蠕動(ぜん どう)運動を改善させる働きのある漢方薬、大建中湯(だいけんちゅうとう)がよく使われます。体力がない人にも使うことができます。おなかが張って腹痛がある便秘には、桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)をおすすめします。

水分不足による便秘には、乾燥している腸の粘膜を潤し、便を柔らかくする麻子仁丸(ま し にん がん)、潤腸湯(じゅん ちょう とう)が有効です。

*胃腸が弱く冷えやすく、下痢がある場合

体を温め、胃腸の働きを高める漢方薬、人参湯(にん じん とう)が有効です。

*過敏性腸症候群の場合

ストレスが原因と考えられる下痢と便秘をくり返す場合は、半夏瀉心湯(はん げ しゃ しん とう)、柴胡桂枝湯(さい こ けい し とう)が有効です。

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西洋医学の考え方

症状

便秘の定義は、排便の回数が3日に1度以下、数日間、便が出ていない、便の量が少ない、便が固い、腹痛、膨満感などがある状態です。

便秘は、おもに機能性便秘と器質性便秘の二つに分けられます。機能性便秘は、大腸に異常は見られないけれど、便を出す働きが弱っている状態です。器質性便秘は、腫瘍などによる大腸の狭窄(きょうさく)など、大腸そのものに異変が見られる状態のことです。

機能性便秘は、さらに、痙攣(けいれん)性便秘と弛緩(し かん)性便秘に分けられます。痙攣性便秘は、おもに、ストレスにより腸が収縮して、腸の中の物がうまく運ばれず、便は乾燥してコロコロしています。弛緩性便秘は、運動不足や食物繊維の不足によって、大腸全体の動きが悪く、便は太く固い状態です。

一方の下痢は、腸管に水分が十分に吸収されず、軟らかい便が頻繁に排出されます。おもに、急性と慢性に分けられ、急性の場合の原因には、ウイルスや細菌の感染、薬物中毒、食品アレルギーなどがあります。慢性の場合は、ストレスによって起こる過敏性腸症候群などの場合もあります。

そのほか、女性特有の原因としては、月経前は女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響で便が出にくくなり、月経が始まると、子宮を収縮させるプロスタグランジン(卵胞ホルモン)の影響で下痢をしやすくなります。

対処法

便秘や下痢が続いている場合には、原因となる病気が隠れていないかどうかを検査します。特別な病気がない場合には、食生活や生活習慣の改善が基本となります。症状がつらい場合には、便秘薬や下痢止めを使って治療することもあります。ただし、ウイルスや細菌の感染が原因の下痢の場合は、下痢止めを使うのは厳禁です。

また、過敏性腸症候群には、便の状態を改善する薬や精神科の薬を使います。


つらい「便秘」を食材で改善-便秘・下痢に効く漢方と養生法

水分と食物繊維をとり、砂糖を控える





まずは、十分な水分がとれているか確認を

便秘の人は、十分な量の水分をとれているか確認してみてください。成人は、1日につき、体重1㎏あたり40 mlの水分が必要だと言われています。飲料だけでなく、料理に含まれている水分も合算します。体重が50㎏ならば、1日におよそ2Lの水分が必要になります。

水分なら何でもよいというわけではありません。コーヒー、紅茶、緑茶などカフェインを含む飲み物は、利尿作用があるため、水分が尿で出てしまいます。水、白湯、麦茶など、ノンカフェインの飲み物を選ぶようにしましょう。なお、一度にたくさんの水分をとると胃腸に負担がかかるので、1日に渡って、少しずつ飲むと効果的です。


食物繊維を多く含む食材をとる

食材は、腸の働きを高め、通便作用があるものをとるようにします。おもに、食物繊維を含む野菜やキノコ類、油分を含むゴマやアーモンドなどの種実類などが当てはまります。なかでも、ゴボウは食物繊維が多く、整腸作用が高いことで知られています。

食物繊維には、不溶性と水溶性のものがあります。不溶性の食物繊維は保水性が高いので、腸で水分を吸収してふくらみ、腸の蠕動運動(ぜん どう うん どう)を活発にさせます。水溶性の食物繊維は粘着性があり、コレステロールなど、体に有害なものを吸着して排出させます。

ゴボウは、食性は微涼性ですが、不溶性、水溶性、どちらの食物繊維も豊富で、便秘対策には優秀な食材です。皮やアクにも薬効があるので、調理するときは、皮は厚くむかないようにして、アクも抜き過ぎないようにしましょう。ただし、食物繊維が多いということは消化しにくく、胃腸に負担がかかりやすいので、胃腸が弱い人や幼児、高齢者などは、とりすぎないようにしましょう。

サツマイモも胃腸の働きを回復させ、便通を促す作用があります。平性で刺激が少ないので、胃腸が弱い人や幼児にも合いますが、食欲を高める働きもあるので、太り気味の人は注意しましょう。おなかが張っている人も、ガスが増えてしまうので向きません。サツマイモはビタミンCも豊富です。ビタミンCは熱に弱いと言われますが、サツマイモのビタミンCはでんぷんに包まれているため、加熱してもあまり失われません。

種実類では、ゴマが普段の食事にとりいれやすいでしょう。とくに黒ゴマは、肝と腎の機能を高め、腸を潤し、便通をよくする作用があります。ただし、粒のままでは消化されず、胃もたれしやすいので、すりゴマや練りゴマを使うようにしましょう。食卓にゴマをするミルを用意して、ご飯やおかずにかけるとより手軽にとれます。

また、酢が、ゴマに含まれるカルシウムや鉄分の吸収を促すので、ゴマ酢和えなどもおすすめです。

なお、ゴマは平性の食材で、幅広い体質、年齢層の人に使えますが、下痢気味の人やおなかが張る人は控えるようにしてください。また、体質的には問題なくても、ゴマをとりすぎてアレルギーになることもあるので、過食はしないようにしましょう。


砂糖を控える

意外に思われるかもしれませんが、砂糖のとりすぎも便秘の原因になります。疲れたときに甘いものを食べると、ホッとする感覚がありますが、これは、甘いものに緊張をとき、体の力をゆるませる効果があるためです。

排泄をするときは、腹筋にグッと力を入れて腹圧を高めて便を出しますが、砂糖をとりすぎるとおなかに力が入りにくくなり、便を押し出せなくなるのです。ゆるみきったおなかは、大きな袋のようなもので、どんどん便をためこむことができ、4、5日便が出なくても平気でいられるようになります。ここまでゆるんでしまうと、戻すのはやっかいな状態だと思ってください。

このような人は、砂糖を控えたり、生姜など体を温める食材をとると、たまっている便が動き出すことがあります。

砂糖の代わりには、ハチミツを使うことをおすすめします。ハチミツには、腸の善玉菌のエサになるオリゴ糖が含まれており、腸内環境の改善に役立ちます。また、胃腸を丈夫にして、機能を高める効果もあります。

ただし、食べすぎると下痢に繋がりやすくなります。また、1歳未満の乳児にも、与えないようにしてください。ハチミツに含まれる、ボツリヌス菌という細菌が腸内で増えて、食中毒などを起こす可能性があるためです。


腰をマッサージする

腸を動かす神経は、腰椎や背骨からも出ています。ストレスが原因で便秘になっている場合、腰や背中の凝りが影響していることがあります。

このようなときは、マッサージや入浴などで腰の血行を促しましょう。腰の中央にある仙骨は、熱が伝わりやすくなっています。そのため、仙骨の周りを中心にマッサージすると、腸が動き出すことがあります。


便秘のお助け食材

温性 クルミ、松の実(微温)、高菜、マッシュルーム、桃
平性 ハチミツ、ひよこ豆、アーモンド、ゴマ、落花生、ヒマワリの種、エノキ、オクラ、白菜、サツマイモ、パイナップル、ナマコ、ヨーグルト
涼性・寒性 アロエ、小松菜、ゴボウ(微涼)、シメジ、ホウレンソウ、フキノトウ、レタス、アボカド、バナナ、ゴマ油

+αでいつもの食事が快腸ご飯に

  • すりゴマをふりかけに、おひたしをゴマ和えに、パンに練りゴマ
  • 砂糖をハチミツに替える
  • ハチミツで煮物
  • ヨーグルト+ハチミツ、コーヒーにハチミツ

  • 季節別おすすめ食材とおかず

    春の食材 タケノコ、フキノトウ、ゼンマイ

    ●おかず
    フキノトウとゼンマイの雑穀ご飯
    夏の食材 オクラ、レタス、桃、スモモ、ハモ

    ●おかず
    レタスと豆のスープ
    秋の食材 ゴボウ、サツマイモ、キノコ

    ●おかず
    サツマイモのグラタン
    冬の食材 白菜、生姜、ネギ

    ●おかず
    白菜とゴボウの味噌汁、ホウレンソウのゴマ和え

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