胃もたれに効く漢方と養生法

つらい「胃もたれ」改善-漢方医学、西洋医学での対処法

胃を温めて、消化を高める



  • 出典:株式会社法研「女子漢方」
  • 著者:矢久保 修嗣 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 科長
  •    木下 優子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 外来医長
  •    上田 ゆき子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 救急担当医長


漢方医学の考え方

症状

胸焼け、吐き気、ゲップや胃に痛みや重さを感じたり、動くと胃の中でぽちゃぽちゃという音がしたり、食べ物が消化されずに詰まったままのような感じや、食ベ物がこみ上げるような感じがするのが胃もたれの状態です。

原因は、脂っこいものや冷たいものをとりすぎたり、いつもの食事量しかとっていないのに、胃腸の働きが弱っていることで、胃の中で食べ物がとどまり、消化されず、胃もたれが生じます。

また、水の巡りが悪くなっている水毒(すい どく)の人も、胃腸がうまく働いていない可能性があります。

食べ物を消化させるのは、気と水の働きが弱まっているためだと考えられます。胃は、温かくないと働きません。

また、ストレスによって気の巡りが悪くなっている気虚(き きょ)の状態でも消化機能が弱まることもあります。

漢方処方

*ぽちゃぽちゃと音がする胃もたれの場合

胃を温め、たまった水分をとりのぞく作用のある六君子湯(りっ くん し とう)を処方します。六君子湯には、余分な水分をとりのぞく作用のある茯苓(ぶく りょう)、蒼朮(そう じゅつ)、ミカンの皮を干した陳皮(ちん ぴ)などの生薬(しょうやく)が使われています。

*冷えがあり、体力のない人

胃を温めて、消化機能を高める作用のある人参湯(にん じん とう)を処方します。滋養作用のある人参(にん じん)に加え、生姜を蒸して乾燥させた乾姜(かん きょう)という生薬も使われています。

*胃の働きが弱まっている場合

胃の血行をよくして、自律神経のバランスを抑えたり、胃酸の分泌を調整したりする作用のある安中散(あんちゅうさん)を処方します。安中散に使われている生薬、茴香(うい きょう)(西洋名はフェンネル)は、西洋でも消化を促すハーブとして使われています。

*口の中の粘つきや、苦味、酸味を感じたり、胃のあたりに熱がこもっていると感じる場合

比較的体力があるようであれば、体の熱や炎症をとる作用のある黄連解毒湯(おう れん げ どく とう)を処方します。のぼせやイライラする感じがある人にも適しています。二日酔いなどにも使われます。


西洋医学の考え方

症状

胃痛・胃もたれが起こる原因は、いくつも考えられます。まずは、食べすぎ、飲みすぎや、消化の悪い食べ物をとったことで、胃酸が出過ぎて胃もたれが起こる場合。薬の副作用によって起こる場合。過労やストレスによって胃の働きが弱まる場合。感染症などによって、胃の粘膜が炎症を起こし、胃に痛みが生じる場合などがあります。 

進行するまで、症状がほとんどあらわれない「沈黙の臓器」と言われる肝臓に対して、胃は少しの変調でも症状にあらわれる傾向にあるので、「饒舌(じょう ぜつ)な臓器」と言う人もいます。

対処法

胃痛・胃もたれの原因となる胃潰瘍、急性胃炎、十二指腸潰瘍などの病気がない場合は、胃腸薬処方で様子をみます。

それ以外では、一時的に食事の量を減らしたり、休養をとったりするなど、生活習慣をととのえることで、胃痛・胃もたれが改善される場合も多いのです。


つらい「胃もたれ」を食材で改善-胃もたれに効く養生法

甘味の食材で胃を補う





女性に多い水毒の胃もたれ

胃の不調で多いのは、胃の中に水がたまって起こる胃もたれです。とくに、水の代謝が悪い水毒(すい どく)が原因で冷え症になって、むくんでいる人にその傾向がみられます。特徴としては、動くと胃の中で水がぽちゃぽちゃと音がします。

原因は、食生活の乱れやストレスによる自律神経の乱れ、冷暖房が普及し、自分で体温を調節する機能が低下したことなどがあげられます。

胃などの消化器は、温かくないと動きません。日本人の平均体温は36・6~37・2度といわれていますが、近年は、35度台という低体温の人も増えています。平熱が低く、胃が冷えていて動きにくい状態の人は胃がもたれやすいといってよいでしょう。

原因が冷えならば、症状が冬に多くあらわれるかというと、そうではありません。実際は、夏の終わりから秋の初め頃に起こりやすい症状です。

これは、夏の間、冷房の効いた室内で、薄着で冷たいものを飲みながら長時間過ごすという生活を1~2カ月も続けていると、秋口になり外気温が下がってくる頃には、体の中がすっかり冷え切ってしまうためです。すると、冷えと夏の疲れで胃は動かなくなるのです。

このようなときにおすすめしたいのは、胃の働きを助け、体を温め、水分を排出する食材です。温熱性の生姜、ネギ、カボチャ、シナモン、また平性の食材ですが、余分な水分を排出させる玄米、ナス、枝豆、トウモロコシなどもとりましょう。

胃の働きを補うのは五味で言うと甘味で、代表的な食材はキャベツです。胃腸薬で有名なキャベジンの由来にもなっていて、消化を促し、気を補います。

また、胃の粘膜の再生を助けるビタミンUが豊富です。ただし、ビタミンUは水に溶けやすく、熱に弱いので、食べるときは、生の状態か、加熱しすぎないよう気をつけて調理してください。そして、体を冷やす寒涼性の食材でもあるので、冷え症の人は生での過食は控えるようにしてください。


熱が滞るタイプの胃痛

食事と食事の間が短かったり、間食が多く、いつも何かを口にしているような人は、胃の中に残っているものを消化できず、胃が炎症を起こしている可能性があります。

さらに、朝起きたときに口の中が苦く感じたり、粘つく、すっぱいものがこみあげてくる感じがあるような場合は、体の中に余分な熱が滞って、炎症が起きている状態で、口内炎ができやすくなります。

このほか、辛いもの、油っぽい食べ物のとり過ぎや、ストレスなどが原因で、胃が熱を持つこともあります。

胃の熱を冷まし、炎症を抑えるには、小麦、豆乳、大根、アスパラガスなど、熱を冷ましたりとりのぞく清熱の働きを持つ食材が効果的です。

大根には、でんぷんを分解するジアスターゼや、タンパク質を分解するステアーゼなど、さまざまな消化酵素やビタミンCなどが含まれており、食べる胃腸薬ともいわれます。

焼いたサンマに大根おろしを添えるのは、脂っこいサンマの消化を助けるためです。大根には解毒作用もあることから、刺身のツマにも用いられます。なお、ジアスターゼやビタミンCは、時間が経つとともに減っていくので、大根おろしは食べる直前にすりおろしましょう。

このほか、山芋も胃腸を丈夫にし、消化吸収力を高めます。これは、山芋の粘り気成分ムチンによるもので、胃腸の粘膜を潤して保護する働きがあります。


食事は就寝2時間前までに済ませる

食べたものを消化するためには、最低2時間かかるといわれています。そのため、食べてから寝るまでに、2時間以上空けることをおすすめします。

1日の食事回数は、朝昼晩の3回にこだわらず、自分の消化能力に応じて決めるとよいでしょう。たとえば、もともと消化能力が弱い人は、1回の食事量を少なめにして、4~5回に分けて食べるほうが消化しやすくなります。昼食に食べ過ぎて胃もたれするという人は、ときには夕飯を抜くのもいいでしょう。

また、胃に水がたまっている人も、消化能力が落ちています。たくさんの食べ物を無理に入れると不完全燃焼になって、パンクしてしまいますので、何回かに分けて、少量ずつ食べるようにしてください。

高齢者の場合も、多くの方は、それほど食べ物から熱量を必要としなくなり、消化能力も落ちてきます。朝からステーキを食べている元気な人もいますが、このような人はもともと消化能力が高い人なのでしょう。

また、前述したように、冷えると一層消化能力が衰えるので、食欲がないからといって、冷たいものや口あたりのよい豆腐やゼリーなどばかり食べないようにしてください。豆乳類や乳製品は、素材そのものが体を冷やす性質を持ちます。豆腐なら冷奴より温奴や味噌汁にするなど、温めて食べましょう。

早食いで、あまり噛まずに食べ物を水で流し込むタイプの人も、消化不良になりがちです。唾液には消化酵素が含まれているので、食事中は水分をとりすぎないようにして、よく噛み、食べ物が唾液と混ざりあうようにイメージして、食べてください。


胃もたれ・胃痛のお助け食材

温性 生姜、ネギ、ニンニク、人参、高菜、カボチャ、栗、イワシ、アンチョビー、ブリ、シナモン、ココナッツ、八角、酢
平性 米糠(ぬか)、山芋、キャベツ、トウモロコシ、枝豆、黒豆、ジャガイモ、レンコン、パイナップル、ナツメ、蓮の実、クロダイ、白魚、スズキ、鴨肉、ひまわりの種
涼性・寒性 大麦、ハトムギ、大根、レタス、白菜、ナス、小松菜、豆腐、ハモ、ウニ、マンゴー

+αでいつもの食事が胃に優しいご飯に

  • 白いご飯を麦飯にしてとろろをかける
  • 味噌汁やスープの具をキャベツやダイコンに
  • 生野菜サラダを温野菜サラダに

  • 季節別おすすめ食材とおかず

    春の食材 キャベツ

    ●おかず
    蒸しキャベツ
    夏の食材 苦瓜、レタス、スイカ、トウモロコシ

    ●おかず
    トウモロコシの炊き込みご飯、枝豆のスープ
    秋の食材 レンコン、栗

    ●おかず
    レンコンのきんぴら、栗と長芋のケーキ
    冬の食材 大根、小松菜

    ●おかず
    ネギと白菜の鍋

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