疲れやすいときに効く漢方と養生法

「疲れやすい」改善-漢方医学、西洋医学での対処法

生命エネルギーの不足を改善



  • 出典:株式会社法研「女子漢方」
  • 著者:矢久保 修嗣 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 科長
  •    木下 優子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 外来医長
  •    上田 ゆき子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 救急担当医長


漢方医学の考え方

症状

漢方では疲れやだるさは、生命エネルギーである気の不足を示す重要なサインだと考えています。

気が足りない状態が続くと、血の不足である血虚(けっ きょ)も招き、体に必要な栄養が不足して、より疲れやすくなります。

漢方処方

放置すると、体のさまざまな不調に繋がる危険性があるので"なんとなく疲労が続く"という段階で、改善する必要があります。

*元気がなく、胃腸の調子も悪い場合

五臓六腑や心身の全体的なエネルギー不足に陥っています。まずは、睡眠、栄養をたっぷりとることが大切です。気や血の不足による疲れには、十全大補湯(じゅう ぜん たい ほ とう)が有効です。

胃腸の機能も低下しているときは、食べすぎを控え、消化のよいものをとるように心がけましょう。漢方薬では、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が有効です。

*顔色が悪く、不眠や不安がある場合

疲れているのに夜なかなか眠れないというときは、漢方薬の加味帰脾湯(か み き ひ とう)が使われます。

*精神的ストレスが強い場合

意識して深い呼吸をすることで、気の流れがスムーズになり、疲れが軽減されます。漢方薬では、気の巡りを改善する加味逍遥散(かみしょうようさん)がおすすめです。

 疲れがたまっていると感じるときは、無理して仕事をしても精度も落ち、効率も上がりません。たとえ、やらなければいけない仕事が山積みだとしても、仮眠をとりましょう。



西洋医学の考え方

症状

なんとなく疲れやすい、だるいという状態は、西洋医学では病気としてなかなか認識されにくいものです。

貧血や胃腸機能の低下、甲状腺の病気、肝機能障害、高血圧、糖尿病など、原因となる病気が隠れている場合もあります。

また、精神的なストレスや疲労により、うつ状態になっていることも考えられます。また、更年期障害症候群の症状でも、だるさや疲れを感じることがあります。

対処法

疲れやだるさが長期間続く場合には、原因となる病気がないか検査を受けて、その病気に対する治療を行います。更年期による症状だと考えられるときは、ホルモン補充療法や低用量ピルによる治療が有効なこともあります。

原因がわからない疲労の場合は、まずは、休養と栄養を十分にとって回復をはかります。


「疲れやすい人の食養」食材で症状改善-気のあるものを食べ、気を補う

気のあるものを食べ、気を補う





食べているものを見直そう

とくに病気というわけでもないのに、疲れやすい、だるいと感じるときは、エネルギーが不足している気虚(き きょ)の状態だと考えられます。気と血は密接に関係しているので、気虚が進むと血が不足する血虚(けっ きょ)にも繋がります。

気虚の場合は、栄養のあるものをたっぷり食べることが必要ですが、ある程度の量を食べている場合は、一度、食べているものの種類や質を見直してみてください。レトルト食品やファストフードなど簡単なものばかりを食べていませんか?

「気のあるもの」を食べていますか? 気のあるものとは、肉や魚、旬の野菜や穀物などです。料理では食材を加工しますが、その加工の工程が少ないほど「気」が多く残るとされています。料理を見たとき、あるいは味わったときに、素材がわかるものが望ましいのです。たとえば、大根なら皮も葉も捨てずに使う、あるいは小魚丸ごとなど本来の姿になるべく近い状態でとるのがよく、漢方ではこれを一物全体(いち ぶつ ぜん たい)と呼んでいます。

旬の食材は栄養価が高く、気を補い、巡らせる力があります。気虚の人は、とくに気を補う食材をとるようにしましょう。


気を補う肉、野菜

気を補う食材はたくさんあります。一般的に滋養強壮食と言われているものや、消化がよく胃腸の働きを助けるものを想像してください。

滋養強壮食の代名詞ともいえるウナギも、気を補う食材です。ビタミンAやD、動脈硬化を予防すると言われるDHA、EPAなどが豊富で、気、血を養う作用があります。ウナギにかける山椒は、脂っこいウナギの消化を助ける作用があります。

ただし、ウナギは栄養の宝庫ではありますが、消化に時間がかかるので、食べ過ぎないよう気をつけてください。

肉類では、体を温める作用がある鶏肉や羊肉、体を潤し、機能を回復させる効果のある豚肉が代表的な食材です。

鶏肉は、高タンパク低カロリーで、消化もよいので、胃腸の弱い人や病後の人にも、おすすめできる食材です。羊肉は、胃腸を強くして気を補う作用があります。ただし、冷え症の人が少量とるぶんにはよいのですが、大熱性の食材なので、体力のない人や体に熱がこもっていると感じている人には向きません。また、豚肉には、疲れをとると言われているビタミンB1が豊富に含まれています。

野菜では、山芋が滋養強壮効果の高いことで知られています。山芋のネバネバはムチンという成分で、粘膜を保護して胃腸を丈夫にし、消化吸収力を高めてくれます。でんぷんを分解するジアスターゼ、糖質を分解するアミラーゼなどの酵素も豊富です。酵素は加熱に弱いのですが、山芋は生で食べられます。とろろ汁など加熱しない調理法で酵素をとりましょう。

カボチャも消化力を高めて、体を元気にする作用があります。豊富に含まれているβカロチンやビタミンCを効率よくとるには、煮物がおすすめです。体を潤すので、喉が渇く人や糖尿病の人などにも向きます。ただし、糖分を多く含むので食べ過ぎには注意してください。

そのほか、ナツメも胃腸を丈夫にし、気と血を補う食材として有名です。大棗(たい そう)という名で漢方でも用いられます。美容にもよく、中国では"1日3個のナツメで老い知らず"などとも言われます。なお、デーツと呼ばれるナツメヤシは、ナツメとは別物です。


すっぱいもので疲労解消

ストレスが多い、あるいは飲酒の習慣があって疲れやすいという人は、肝臓が弱っている可能性があります。東洋医学では、五臓と五味の関係性をあらわすものとして「肝は酸を好む」と言い、その言葉通り、酸味のある果物や酢などをとると、疲労が軽減されると考えています。

疲労は、体に乳酸がたまることで起こります。かんきつ類の酸味成分であるクエン酸は、体に乳酸がたまるのを抑え、とくに筋肉疲労の解消に役立ちます。旬の時期ではないなど、果物そのものがないときは、ジュースでも同様の効果が得られます。

梅干しも、クエン酸が疲労物質を代謝させるほか、整腸作用もあります。ただ、強い酸は消化器への刺激が強すぎるので、量はほどほどにしてください。

なお、疲れると甘いものを食べたくなる人も多いと思いますが、そのようなとき、甘いものを食べすぎると、血糖値が急に上下してかえって疲れがひどくなるので、逆効果です。


疲労のお助け食材

温性 もち米、水飴、ニンニクの芽、マイタケ(微温)、カボチャ、ココナッツ、サクランボ、アナゴ、イワシ、エビ、鮭、サバ、マグロ、鶏肉、羊肉、甘酒
平性 うるち米、玄米、サツマイモ、ジャガイモ、山芋、銀杏、大豆、エンドウ、シイタケ、トウモロコシ、パイナップル、ブドウ、ウナギ、カツオ、白魚、タラ、牛肉、ウズラの卵、ソラマメ
涼性・寒性 アスパラガス(微涼)、三つ葉(微涼)、袋茸、アボカド、タコ

+αでいつもの食事が、元気アップメニューに

  • 気を補う食材の組み合わせ
      ウナギ+山芋、豚肉+ニンニクの芽
  • ナツメを料理にとりいれる
      ナツメとカボチャの煮物、ナツメ粥、ナツメ茶

  • 季節別おすすめ食材とおかず

    春の食材 ソラマメ

    ●おかず
    アスパラガスとエビの温サラダ、エンドウ豆とゴマのサラダ
    夏の食材 ウナギ、枝豆、アスパラガス、サクランボ、桃、ビワ、梅、トウモロコシ

    ●おかず
    コーンポタージュ、枝豆ご飯、サクランボのジャム、梅ジュース、ウナギのちらし寿司
    秋の食材 カボチャ、サツマイモ、栗、リンゴ、銀杏

    ●おかず
    銀杏ご飯、カボチャとナッツのサラダ、栗とレバーの炒め物、キノコと鮭のソテー
    冬の食材 タラ、人参、ホウレンソウ、ミカン

    ●おかず
    タラチリ鍋、ホウレンソウのカレー

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