風邪に効く漢方と養生法

つらい「風邪」改善-漢方医学、西洋医学での対処法

早めの対処で、悪化を防ぐ



  • 出典:株式会社法研「女子漢方」
  • 著者:矢久保 修嗣 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 科長
  •    木下 優子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 外来医長
  •    上田 ゆき子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 救急担当医長


漢方医学の考え方

症状

風邪の初期は、体のだるさ、せき、くしゃみ、鼻水、寒気、頭痛などがあり、悪化すると、発熱、吐き気などの症状があらわれます。

原因は、邪気(じゃ き)が鼻や口から肺に入ることで引き起こされます。

同じ環境にいても、風邪を引く人と引かない人がいますが、これは、風邪そのものの強さや、本人の体の強さが異なるためです。気、血、水のバランスがとれていて、それぞれがスムーズに巡っていれば、風邪が入ることを防げます。しかし、バランスがとれずに、とくに気が弱っていると、風邪が体の奥に入り込み、諸症状があらわれます。

インフルエンザに対する漢方薬では、麻黄湯(ま おう とう)がウイルス薬のタミフルに勝るとも劣らない作用があると言われています。また、中国では板藍根(ばん らん こん)という生薬(しょうやく)が処方されることもあります。

漢方処方

風邪の範囲はとても広いので、風邪の性質を見分けて、対応する必要があります。それには、身体を温め、免疫能力を高めて、風邪を外に出す治療を行います。

*悪寒や頭痛を感じる風邪の引き始めの場合

悪寒、頭痛、体のだるさがあり、鼻汁、くしゃみ、せきは、風邪の引き始めです。この段階で対処すれば、普通の風邪ならば悪化を防げます。

この場合、もっとも有名な漢方薬の一つである葛根湯(かっ こん とう)を処方します。

ただし、葛根湯は、比較的体格がよく、胃腸が丈夫な人に適している漢方薬なので、体の弱い人にはおすすめしません。

体力がない人、お年寄りには、桂枝湯(けい し とう)、麻黄附子細辛湯(ま おう ぶ し さい しん とう)を使います。

*鼻水が出る場合

くしゃみや水っぽい鼻水が出ている場合には、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)を使うと速効性が期待できます。これは、花粉症にも使われる漢方薬です。

鼻水に粘りがある場合は、葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)が有効です。日本でつくられた処方で、鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎に用いられています。

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西洋医学の考え方

症状

咳、鼻水、くしゃみ、頭痛、発熱などのつらい症状が起こります。その原因は、約9割がウイルス感染によるものだとされています。ウイルスの種類は100以上もあると言われていて、風邪のためにウイルスを特定して、ピンポイントに治療するということはしません。

そもそも、日本では多くの人が、風邪を引くと病院に行きますが、外国では自宅で体を休めて様子をみるのが一般的です。

本来ならば、風邪の症状が収まるまで、安静にしているのが一番よいのです。

しかし、日本人は、"会社に行かなければならない""家事をしなければいけない"と非常に勤勉な人が多いので、風邪を治して、すぐに活動を始める人が多く、そのために悪化してしまう人もいます。

対処法

発熱には解熱剤、咳には鎮咳去痰薬(ちんがいきょたんやく)など、それぞれの症状を抑える西洋薬を処方して、経過をみます。多くの場合は、1週間程度で症状が緩和しますが、それ以上続くようであれば、別な病気の可能性もあるので、改めて受診することをおすすめします。


「風邪」を食材で改善-体を温め、胃腸をいたわる




風邪の初期は体を温める

体の節々の痛みやだるさ、頭痛、鼻水などの症状とともに、布団をかぶっていたくなるような悪寒などがある場合、風邪の可能性があります。 

ご自身で風邪かそうでないかを判断することはできないと思いますが、もしも風邪だと感じたら、脱水予防に、できれば温かい飲み物で水分補給をして、すぐに寝ることをおすすめします。

一般に"風邪には栄養と休養が一番"と言われていますが、初期の場合は、食欲がなければ無理に食べる必要はありません。

なぜでしょうか? 風邪を引いたとき、普段は大好きな食べ物が食べられなくなったり、美味しいと感じなくなったことはありませんか? 味覚が変わったり、食欲がなくなったりするのは、そのときの自分の体が食べ物を欲していないということなのです。

これは、風邪を引くと消化機能が衰えるからです。そのため、風邪の引きはじめは、消化器に負担をかけないよう、食事は控えめにし、胃腸も休ませたほうが回復は早まります。

このような状態の場合は、おなかに優しく、体も温まる生姜湯や葛湯がおすすめです。葛(くず)は葛根湯(かっ こん とう)の主成分です。寒気を追い払い、気を巡らせ、免疫力を高める働きがあります。葛湯にはおろしショウガを加えるとさらに温まります。食材で体が温まると、薬の効果も高まります。

悪寒がなくなり回復してきたら、胃に負担をかけない、消化がよいと言われているものから、少しずつ食べるようにしましょう。うどんやおかゆなどの穀物を中心に、やわらかく煮たジャガイモ、白菜、カボチャなどを一緒にとるとよいでしょう。

栄養素の面で言えば、野菜は煮込むとビタミンCや酵素などが失われますが、それにこだわって非加熱のものばかり食べていると、体が冷えてしまいます。風邪のときは、消化がよく、体を温める調理法で、胃腸をいたわりながら、栄養をとることが先決です。


発熱したら、熱を冷ます作用のある食べ物を

発熱は、私たちの体が、ウイルスと戦うために体温を上げようとしていることで起こります。体が頑張っているのです。

熱が上がりきると、通常は寒気を感じなくなります。このような状態になったら、冷たいものを口にすると気持ちがよいと感じるでしょう。口あたりのいいゼリーやプリンなど、少し冷たいものを食べても構いません。

また、こもった熱を下げるためには、発汗作用のある食材をとって汗をかくと、回復が早まります。生姜、ネギ、ニラなどがおすすめです。


熱に加えて便秘がある場合は腸を刺激

風邪で熱が上がると、熱によって体の中の水分が失われ、胃腸も弱るだけでなく、便秘になりやすくなります。西洋医学の風邪薬の影響で、腸の働きが弱まる場合もあります。

熱でつらいうえに、おなかが張って苦しいときは、柑橘系のジュースやトマトジュースなど腸を刺激するものを飲んでみてください。便が出ると、熱も外に出せるようになるので、少し楽になります。


風邪の諸症状の食養

寝込むほどではないけれど、咳やのどの痛みなど風邪の諸症状があって、つらいということもあるでしょう。そのようなときに、有効な食養をご紹介します。

*〈空咳が出る場合〉

痰を伴わない空咳(から せき)には、梅、梨、ユリ根などの食材が効果的です。梅や梨には、肺の機能を回復させる作用があります。とくに梨は、山芋と一緒に煮て、くず粉でとろみをつけると咳止めになります。咳止めには、大根も同様の効果があります。なお、梨は寒性で水分が多いので、微熱があるときにも効果的です。

ユリ根も、肺を潤し咳を抑えます。ユリ根を乾燥させたものは、百合(ひゃくごう)という生薬(しょうやく)で、漢方薬に用いられています。野菜の中では、粘膜を丈夫にするビタミンB2を多く含みます。空咳には、ユリ根のしぼり汁にお湯を加えて飲むとよいでしょう。

*〈湿った咳が出る場合〉

痰のからんだ湿った咳に効く食材では、カリンや大根が知られています。カリンには、痰を除いて咳を鎮める作用があります。生のままでは渋くて食べにくいので、ハチミツやお酒に漬けて利用しましょう。

カリンの種には、そのまま食べると中毒の可能性があるアミダグリンが多く含まれますが、種を煎じると咳止め効果があるとも言われています。

大根は、痰を出やすくし消化を促進します。ハチミツか水飴に漬け、できた汁を飲むとのどの痛みや咳に効き目があります。

*〈くしゃみ、鼻水が出る場合〉

くしゃみや鼻水がひどいときは、体を温める食材をとるようにしましょう。前述のクズや大根をはじめ、ニラ、長ネギ、紫蘇、生姜、ニンニクなどです。

ニラは胃腸を温め、気の巡りを改善させ血液の循環も促します。長ネギや紫蘇も、気の巡りをよくし、発汗作用で風邪の寒気を除きます。


穀物は食養の要

漢方では穀物は基本の食材です。穀物は体に一番害が少なく、胃腸が弱い人にも、冷え症の人にも暑がりの人にも悪さはしません。

風邪で何も食べたくないというときは、休養をとったあとに、おもゆなどから始めて、五分粥、全粥と進み、野菜類やタンパク質を増やしていきましょう。


風邪のお助け食材

温性 うるち米、羊肉、鶏肉、カボチャ、 ニラ、長ネギ、葉ネギ、水飴、 黒砂糖、ショウガ、 ニンニク(生は熱性)、ワサビ、シナモン
平性 ジャガイモ、百合根、 梅、カリン、葛、ハチミツ
涼性・寒性 大根、苦瓜、梨

+αでいつもの食事が風邪対策ご飯に

  • おかゆやスープに百合根をプラス
  • 味噌汁にニラや長ネギを加える
  • 葛粉を料理のとろみやデザートに利用
  • コーヒーやお茶の代わりに生姜湯や葛湯を飲む

  • 季節別おすすめ食材とおかず

    春の食材 ウド

    ●おかず
    ウドと菜の花のおひたし
    夏の食材 紫蘇、生姜、ニラ、苦瓜、梅

    ●おかず
    ニラと卵の炒め物
    秋の食材 カボチャ、梨、カリン、百合根

    ●おかず
    カボチャの葛あんかけ、梨のコンポート
    冬の食材 長ネギ、大根、百合根

    ●おかず
    百合根と豚肉炒め、大根と鶏肉のスープ

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