【乳がん患者の体験談】自分で選ぶ治療法-ホルモン療法と抗がん剤

前向きな闘病には、納得のいく治療の選択が大切です

前向きな闘病には、納得のいく治療

乳がんは初期の段階では、自覚症状がないことが多く、私の場合も宣告を受けたその瞬間に、いきなり「乳がん患者」というレッテルを貼られてしまった、というのが正直な感想です。健康だったさっきまでの私と、今の私は一体何が違うの? と思うくらい、違う人間になってしまったような気がするのです。

 がん、…まだ40代なのに、死ぬの? とまず思う。そして、すぐに死ななくても、今までと同じ生活は到底できなくなるのだろう。なんたって「がん」なんだから。と漠然と思い、見えない将来に恐怖を覚える。あまりの衝撃で悲しいという以前に思考を停止させてしまい、笑ってしまいそうになるくらい自分のこととは思えない。

 しかし、数十分、あるいは数時間後には、これは夢じゃない、と否応ナシに現実に引き戻されます。

目の前の医師が私の症状を紙に書いてていねいに説明してくれているのを、現実逃避しようとする脳を必死でおさえこみ、言葉を理解しようとする。とても理解できる精神状態ではないけれど、ここで理解しないと大変だ! とまさに葛藤でした。

 幸い私の検査結果は、超早期の乳がんという診断で、治ると言われました。しかし、範囲が広いので右胸は全摘出になるとも。治るなら超ラッキー、なのだろう。でも、片ほうのおっぱいがないまま、この先を生きていくなんて、想像できませんでした。

しかし、そんな私の心を安定させてくれたのは、買い込んだ医学書などから得た乳
 がんの知識でした。

私は、私のようにしこりにならない乳がんがあることも知らなかった。でも、先生がくれた手書きの紙を片手に、乳がん本を読み進めていくうちに、乳がんという病気のこと。自分のおかれている状況を少しずつ理解できるようになり、それとともに、冷静さを取り戻せたのです。

人は先が見えない状況に一番恐怖を覚える。悪いことでも自分の状況が分かると、次に進むべき道が見えてくるので、恐怖が和らぐのだと、以前取材した精神科医の言葉を思い出しました。確かに、私には「超早期だから死なない」という心の余裕もありました。でも早期でなくても、分からないより、分かって対策を立てるほうが精神的には安定するのだそうです。

治療の情報を集め、友人を介して乳がん経験者に話を聞かせてもらっているうちに、どんどん不安が薄れ前向きになりました。そして、乳房を失うのであれば、すぐに取り戻したいと思うようになり、同時再建を決意しました。乳首も可能であれば残したい。手術跡はできれば脇にしたい。そんな私の要望を考慮してくれる病院を探しました。手術を引き延ばして手遅れになっては大変、という限られ時間のなか、セカンドオピニオンをとり、転院し、手術を受けました。精神的に辛いけれど、ここで人任せにして後悔したくないと思いました。おかげで自分にとって納得のいく手術にのぞむことができました。

検査の段階では超早期という結果でしたが、手術後の患部を病理で調べてみると、思ったよりも進行していたことが分かりました。超早期なら、手術で治療が終わるはずでしたが、今後、転移再発する可能性がでてきたため、女性ホルモンを止めるホルモン療法と、抗がん剤をすすめられたのです。

正直いって、乳がんを宣告されたときよりも、私にとってショックでした。やっと治療が終わったと思ったら、これからもっと辛い治療をしろというのですから。

治療法は自分で選ばなければなりません。

私にとってホルモン療法も抗がん剤もどちらも絶対に嫌でした。しかし、自分の現状と再発リスクを考え、2週間かけて両方とも受け入れる決心をしました。迷いに迷い、ものすごく辛い作業でしたが、自分で納得して受けたことで、結果的に治療に自信がもてました。ただ、これは私にとってのベストであって、人それぞれに納得のいく治療の選択があります。

治療は人任せにすると、何かあったときに人のせいにしてしまい、不安がつきまとう。自分で納得できる治療を選ぶには、正しい知識が必要でした。

しかし、平常心ではいられないない患者にとって、溢れるがん情報から、正しい情報をピックアップしていくことは、大変な作業です。精神的な安定には体験者の話を聞くこと以外にも、正しい知識の提供が不可欠だと気づきました。

そこで抗がん剤が終わって落ちついたところで、NPO法人キャンサーネットジャパンが開設している乳がん体験者コーデディネーター(BEC)の養成講座で勉強をして認定をとりました。

患者はそれぞれに、とても小さな分からないことで不安になりますが、忙しい医師や看護師にいちいち聞くことができず、悶々とします。養成講座はそういう患者さんと医療者の間にたてる人を養成するのが目的です。

がんと宣告されると、2~3日パニックになる「衝動段階」になり、やがて1~2週間の「不安定段階」を経て、 病気を受け入れる「適応段階」へたどりつくそうです。ところが不安定な状態から解放されず、適応障害を含む鬱になる方が3~4割いるといいます。不安定な状態から早く抜け出して前向きな治療をしていくには、正しい知識をもって治療を自分で選択していくこと。そして体験者の話を聞くことが有効だと思います。

乳がん体験者コーディネーターに相談できる場所はまだ限られていますが、これからこのような役割を担う人たちが求められていくことは、明らかです。そして、患者さんや家族が治療を乗り越えられたら、ぜひ養成講座に参加していただけたらと思います。

次回は、闘病生活を明るくする工夫についてご紹介します。

【執筆】
山崎 多賀子さん


美容ジャーナリスト
化粧品メーカー、女性誌の編集者を経てフリーに。スキンケアからメイク、健康・メンタル美容まで幅広いジャンルで取材を続ける。著書に自らの乳がん体験談や乳がん患者に役立つ情報をまとめた『「キレイに治す乳がん」宣言!』(光文社)、人気連載をまとめた『山崎多賀子の極楽ビューティ体験記』(扶桑社)がある。NPO法人キャンサーリボンズ理事。NPO法人キャンサーネットジャパン認定乳がん体験者コーディネーター。

【書籍】
『「キレイに治す乳がん」宣言!』
(光文社)

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