手軽にできるワンコイン健診って知ってる? 保険証も予約も不要

仕事帰りや買い物の途中で気軽に、安価に健診を

健診結果は、健康を考えるきっかけとして、健康状態の改善を確認する手段として活用してほしい

「機会がない」「時間がかかる」「お金がかかる」が健診を受けない理由

 私は、東京大学医学部附属病院で看護師として勤務していたときに、健診を受けておらず、気がついたときには糖尿病などの生活習慣病が進行して深刻な事態に陥っている患者さんが多く存在することを知りました。
 Aさん(35歳、男性、フリーター)は、入院した次の日に、糖尿病合併症で壊疽(えそ)した足を切断しなければなりませんでした。Aさんは会社では健康診断の機会がなく、長い間健康診断を受けていなかったのです。その後Aさんは糖尿病がさらに進行して血液透析を週3回受けるようになり、仕事ができなくなり、生活保護を受けるようになりました。年間600万円の医療費は、全て税金で支払われることになりました。生活習慣病は、患者さんの人生だけでなく、社会コストとしても大きな影響を及ぼします。

 Aさんが健診を受けていれば、糖尿病を未然に防げたかもしれません。食べるものも着るものも困らない日本において、どうして健診を受けていない人がこんなにも多いのだろうか? その疑問からマーケティング調査を行い、健診を受けない理由として、「機会がない」「時間がかかる」「お金がかかる」ことを突き止めました。そして、これを打開する策として思いついたのが、1項目500円で受けられる「ワンコイン健診」でした。そこで2007年にケアプロ株式会社を設立し、翌年には東京・中野駅の近くにワンコイン健診を行うスペースをオープンしました。

血糖値、総コレステロール、中性脂肪などが各500円で

 健診メニューは血糖値、総コレステロール、中性脂肪、肺年齢、骨密度などで、1項目当たり500円で検査することができ、結果はその場で、5分程度でわかります。また、保険証や予約は不要で、誰でも気軽に安価な値段で健診を受けることができます。
 利用者からは「自分で調べたいメニューを選べて便利」「こんな簡単に結果が出るなんてビックリ!」「500円から受けられるから手軽」と、驚きの言葉が上がっています。また、血液検査は専用の検査機器を用いた自己採血で行われますが、「輪ゴムで指を弾いた程度で思ったより痛くない」との声も多いです。

 ワンコイン健診を受けている人の多くは、健診を1年以上受けていない方です。たとえば、子育て中で健診に行けなかった主婦、平日は仕事から抜けられず休日にしか時間が取れない自営業者、月給10万円未満で健診を受けるお金がないフリーター、保険証を持っていない外国人などです。健診結果は標準値と、異常値の要注意、要受診の3段階に分かれていて、利用者の約3割が「要注意」と判定されています。「自覚症状がなく、こんなに悪いとは思わなかった」「やっぱり糖尿病だったか。すぐに病院に行きます」「早く気がついてよかった」といった声が聞かれます。

 ケアプロでは、中野以外にも関東を中心に、仕事帰りや買い物の途中で気軽に立ち寄ることができるさまざまな場所で、ワンコイン健診の出張サービスを行っています。利用者層は場所によって異なり、ショッピングセンターでは主婦が多く、パチンコ店ではフリーターや自営業者が多く、エキナカでは会社員が多いといった具合です。

自分の健康を守り、社会保障制度を守るために

 健診結果は、健康を考えるきっかけとして、また、健康状態が改善していることを確認する手段として、活用していただきたいと思っています。

 普段健康診断を受けていない人には、ワンコイン健診の結果を踏まえて、食事や運動の習慣を見直していただきたいです。たとえば、血糖値が高い方は炭水化物ばかり食べていたり、中性脂肪が高い方は毎晩飲酒していたり、血圧が高い方は喫煙習慣があったり肥満だったりといったことを、客観的な検査数値で改めて振り返ることができます。
 そして継続して健診を受けることで、フィットネスクラブで運動を始めた、栄養バランスを考えた食事をとるようになったなど、生活習慣を改善したことによる効果を確認することができ、「頑張ったおかげで改善した!」という声も。数値が改善していれば、生活習慣改善のモチベーションもアップします。

 また、健診結果が「要受診」の範囲に入っている場合は、医療機関への受診を促します。10年以上健康診断を受けず、ケアプロで糖尿病の疑いがあることがわかり、医療機関を受診して一命を取りとめた方もいらっしゃいます。

 生活習慣病は自覚症状がないまま進行する病気で、気がついたときには手遅れになりかねません。私は、病気になってから後悔する多くの患者さんを見てきました。そして、生活習慣病の患者さんが増えることで医療費が高騰し、このままでは社会保障制度が破綻してしまうことに危機感を抱いています。

 一人ひとりが、自分の生活習慣を見直し、健康維持・増進に努めることで、生活習慣病を予防していける社会を実現するために、ワンコイン健診を普及させていきたいと考えています。美容院に行くような感覚で、数カ月おきに定期的に健康チェックをするのが理想です。
 そして、医療費抑制によって社会保障制度を維持し、リスクを分散すべき難病や交通事故などの際に安心して医療を受けられる世の中を守らなければなりません。

 *「ワンコイン健診」以外にも、以前から簡易にできる健診(検診)として「郵送健診(検診)」があります。これは、生活習慣病、各種がん、C型・B型肝炎、ピロリ菌、クラミジアなどについて、希望する検査キットが郵送され、採取した検査物(検体)を医療機関や検査機関に郵送すると、後日検査結果が報告されるというものです。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川添 高志さん


看護師、保健師
ケアプロ株式会社代表取締役
1982年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学看護医療学部卒業。東京大学医学部附属病院で看護師勤務と併行して、東京大学医療政策人材養成講座に通い、ケアプロの事業を構想し、優秀賞「特賞」を受賞。慶應義塾大学SEAで、「The best new markets award」受賞。2007年12月、ケアプロ株式会社起業。NEC社会起業塾7期生。社会イノベーター公志園にて審査員特別賞受賞。慶應義塾大学KIEPおよびSVP東京の支援を受ける。

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