腸の検査をしても、異常が見つからないのに下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群。現在、この病気に悩んでいる人の数が増えています。仕事中や出先、移動中などで下痢や腹痛が続くと、不安が尽きず、生活にも支障をきたしてしまいます。また、便秘が続くと体に悪いばかりでなく、不快感からイライラもたまってしまいますよね。しかし、下痢や便秘が慢性的に起こるから過敏性腸症候群だと思っていても、実は違う病気が隠れていることもあり、安易に自己判断するのは危険です。ここでは、過敏性腸症候群か他の病気か、自分で見極めることができるセルフチェックを紹介します。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

「過敏性腸症候群」って、一体なに?

「過敏性腸症候群」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではと思います。なかには、「今、過敏性腸症候群に悩んでいる」という人もいるかもしれません。ここでは、「過敏性腸症候群」の症状や原因について、基本的な事柄をおさらいしてみます。

(1)過敏性腸症候群の主な症状

お腹の痛みや不快感とともに、下痢や便秘が慢性的に続くことを「過敏性腸症候群」と言います。血液検査や内視鏡検査をしても、ポリープや潰瘍などの異常が見つからないこと、が判断の決め手になりますが、そのほかにも「緊張すると症状がひどくなる」「ストレスから解放されると症状が和らぐ」など、心理的な側面と大きく関連して症状の変化がみられることも、「過敏性腸症候群」の特徴です。まとめると、過敏性腸症候群の主な症状は次のようになります。

  • 腹痛を伴う下痢や便秘が慢性的に起こる
  • 腹部膨満感や腹鳴(お腹がゴロゴロと鳴る)がある
  • お腹がガスっぽい
  • 頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如などが起こる

(2)症状別に3タイプ

過敏性腸症候群は、症状によって3つのタイプに分類されます。

1)下痢型
突然の腹痛とともに、水のような便を排泄する

2)便秘型
うさぎの糞のようなコロコロした便を排泄。排便が困難になる

3)交代型
下痢と便秘を交互に繰り返す

(3)主な原因は精神的・肉体的ストレス

過敏性腸症候群を起こす原因にはさまざまなものがありますが、もっとも頻繁にみられるのが精神的・肉体的ストレスです。たとえば「仕事で大きな不安を感じたとき、急激にお腹が痛くなってトイレに行きたくなる」という症状が慢性的に続くのであれば、精神的ストレスが原因となって過敏性腸症候群が起こっているのかもしれません。また、過労や睡眠不足を感じた時に下痢や便秘になるのであれば、肉体的ストレスが原因となっているのかもしれません。なぜ、ストレスが原因で過敏性腸症候群が起こるのかについては、脳下垂体から放出されるホルモンが原因とされています。すなわち、人間がストレスを感じると脳下垂体からストレスホルモンと呼ばれる物質が放出され、その刺激で腸の動きがおかしくなり、過敏性腸症候群の症状が出るのです。この動きが何度も繰り返されると、腸が刺激に対して過敏になり、ほんのわずかな刺激にも反応して症状が悪化するという悪循環に陥ります。脱水症状を予防するため、しっかり水分を補給することが必要です。

原因:ストレス
チェック方法:腹痛を伴う下痢または便秘が慢性的に続く、腹部膨満感、腹鳴、頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如
治療法:生活・食事指導、薬物療法、心身医学的治療

関連する病気: 過敏性腸症候群

もしかして、「過敏性腸症候群」かも? セルフチェック

便秘や下痢を起こす病気には、いろいろなものがありますから、一概に「過敏性腸症候群が原因」と決めるのは危険です。ここではひとつの目安として、自分でできるセルフチェックの方法をご紹介します。ただし、確実に他の病気が隠れていないというわけではないので、気になる人は内科や胃腸科で診察を受けましょう。

  1. 排便をすると、お腹の痛みが和らぐ
  2. 水のような下痢を頻繁に起こす
  3. 1日3回以上、下痢を起こすことがある
  4. 週に3回以下しか、便が出ないことがある
  5. 強くいきまないと排便できない
  6. 下痢と便秘を繰り返すことがある
  7. 緊張したり、不安を感じたりするとお腹が痛くなることがある
  8. 常にお腹が張っている感じがする。お腹にガスが溜まっている感じがする
  9. 普段からあまり水分を摂取しない
  10. 便をしても残便感があり、スッキリしない
  11. 食欲がない
  12. ハードワークが続いている
  13. 仕事はデスクワークが多い
  14. 生活が不規則である
  15. 朝食を抜くことが多い
  16. 運動不足だと思う
  17. 真面目で責任感が強いタイプだと思う
  18. 神経質で緊張しやすいタイプだと思う
  19. 職場や家庭で辛いことや不安なことが多い
  20. 趣味がない、気分転換が苦手だ

これらの項目で、「はい」と答える質問が多い人は、過敏性腸症候群が疑われます。時期や症状によって「はい」の付く数は異なるでしょうし、一口に「いくつ以上」と断言することはできませんが、普段から自分の体調や心の状態に気をつけておき、「はい」が増えたと思ったら、内科や心療内科で相談してみても良いと思います。

「過敏性腸症候群」かもしれない、と思ったら?

もし自分が「過敏性腸症候群かもしれない」と思ったら、一体どのような対策を取れば良いのでしょう。対処法を見てみます。

(1)ストレスを溜めない
過敏性腸症候群の大きな原因は、心理的なストレス。そのため、趣味の活動を始めたり、スポーツをしたり、ストレスを発散できる手段を見つけることが大切です。帰宅後はゆっくりお風呂に入る、音楽を聴く、本を読むなど、一人の時間を楽しめるようにすることも、ストレスの解消に役立つでしょう。

(2)規則正しい生活を送る
睡眠不足や過労が続いて、身体的なストレスが原因となって過敏性腸症候群を発症している場合は、しっかり休養をとることが大切。規則正しい生活をして、朝食をしっかりとり、生活のリズムを整えることで、体に対する負担を軽減することができるでしょう。

(3)腸に負担となる食べものを取らない
下痢を起こしやすい人は、辛いものや脂っこいものなどを控えましょう。また、コーヒーやアルコールなども、症状を悪化させます。

(4)市販の便秘薬や胃腸薬を上手に使う
便秘や下痢を解消するのに、漢方薬や市販の薬を使うのも良いでしょう。腸内環境を整える整腸薬も、症状の緩和に役立つかもしれません。しかし、市販の便秘薬や胃腸薬の中には常用したり、下痢を無理に止めたりするとかえって症状を悪化させるものもあるため、専門家に相談することをお勧めします。

(5)困ったら医師の診察を受ける
腹痛を伴って下痢や便秘が長期間続く場合は、内科や消化器科、胃腸科で診察を受けましょう。ストレスが原因と思い当たるようなら、心療内科を訪ねても良いでしょう。医師の診断を受けることで心が安心し、辛い症状から解放されることもあります。

【まとめ】

近年、過敏性腸症候群の患者数は増加傾向にあります。現在、日本人のおよそ7人に1人が過敏性腸症候群に当てはまると推定されており、さらに、30代より若い年代に比較的多くみられる傾向があると言われています*。仕事もプライベートも忙しく、自分の健康にまであまり手が回らない世代だから、ということが理由なのかもしれませんが、下痢や便秘の症状がひどくなると、不安が増大して会社や学校へ行けなくなったり、家から出られなくなったりすることもあります。症状に悩んでいる場合は、早めに医師の診断を受け、対策をとることをお勧めします。

*Hiroto Miwa. Patient Prefer Adherence. 2008; 2: 143-147.

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