仕事やプライベートで、何かとストレスを感じやすい現代社会。ストレスが大きくなると、体にさまざまな不調が現れることがあります。胃が痛くなったり、お腹が痛くなったり、下痢を起こしたりする人もいるでしょう。このようなトラブルには、どのように対処するのが良いのでしょうか。痛みが起こった時、市販薬に頼るのもひとつの手段かもしれませんが、普段からそうしたトラブルが起こらないよう、心がけておくのも大切なこと。ここでは日頃から簡単にできる、ストレスによる腹痛や下痢の対処法を紹介します。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

そもそも、なぜストレスで腹痛や下痢が起こる?

なぜ、ストレスを感じると腹痛や下痢を起こす人が多いのでしょう。それには、自律神経の働きが乱れていることが関係しています。

(1)ストレスで胃酸過多

胃の中で分泌される胃酸は、食べたものを消化したり、体内に取り込まれたさまざまな菌を殺菌したりする働きをしています。この胃酸は強力な酸性で、胃の粘液は胃の粘膜が胃酸で傷つけられることがないように、常にバランスをキープしています。しかし、何らかの原因で胃酸が過剰に分泌されてしまうと、胃の粘液が粘膜を守ることができなくなり、胃酸が粘膜を傷つけてしまいます。そのため、胃が痛くなってしまうのです。胃酸が過剰に分泌される原因にはいろいろなものがありますが、ストレスもそのひとつ。心理的ストレスだけでなく、睡眠不足など生活の乱れや過労など、身体的なストレスも原因になります。

(2)自律神経と胃痛の関係

人間の健康は、交感神経と副交感神経から成る自律神経によってコントロールされています。しかし、強いストレスがかかるとこの自律神経の働きが乱れ、胃酸が必要以上に分泌されてしまいます。そのため、胃の粘膜が傷ついて、胃痛を引き起こしてしまうのです。

(3)ストレスは腸にも影響する

さらに、ストレスがかかると脳にもその影響を与え、腸の働きを促す信号にも狂いが生じてしまいます。そのため、腸が刺激に対して過敏になり、下痢を引き起こしてしまうのです。つまり、胃や腸はストレスによる影響をとても受けやすい臓器であり、こうした状態が慢性的に続くと、病気を引き起こす可能性もあるのです。

ストレスによって起こる胃腸の病気

それでは、ストレスによってどんな病気が起こりうるのでしょうか。もっともよく見られる病気について、いくつかあげてみます。

(1)急性胃炎

みぞおちのあたりに強い痛みを感じたり、悪心や嘔吐の症状がみられたりしたら、急性胃炎を疑います。胃炎とは、さまざまな原因で胃の粘膜に炎症が起きている状態のこと。出血、びらん、浮腫などがみられることがあります。胃炎を起こす原因にはストレスのほか、アルコールの取りすぎやピロリ菌感染、食べ過ぎや飲みすぎ、食中毒、アレルギー、薬の副作用など多岐に渡ります。しばらく安静にしていると症状は落ち着きますが、症状が重い場合は長引くことも。また、もしかしたら胃がんが隠れている可能性もありますし、また、放置しておくことで急激に症状が進むこともあるので一度、医師の診断を受けた方が良いでしょう。

原因:ストレス、アルコールの過剰摂取、ピロリ菌感染、暴飲暴食、食中毒、アレルギー
チェック法:胃痛、胸焼け、嘔吐、悪心、食欲不振、腹部膨満感
治療法:薬物療法
関連する病気: 急性胃炎

(2)胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃炎が長引いて症状が重くなると、胃潰瘍を発症することがあります。これは、胃酸によって胃の粘膜が傷つけられ、粘膜や組織の一部が失われた状態のこと。放置すると吐血や下血を起こしたり、胃壁に穴が開くことがあります。また、同じような潰瘍が十二指腸に発生することを、十二指腸潰瘍と言います。どちらも主な発症の原因はピロリ菌感染で、直接ストレスが潰瘍を作っているわけではありません。しかし、ストレスのある人の方がピロリ菌による潰瘍を作りやすいことが、最近の研究によりわかっています。また、普段から常用している抗炎症薬や鎮痛薬が胃や十二指腸にダメージを与えていることもあります。放置しても自然に治ってしまうこともありますが、慢性化したり、重症化したりすることもありますから、痛みが繰り返したり、長引いたりする場合は注意が必要です。

原因:ピロリ菌感染
チェック法:みぞおちあたりの痛み(胃潰瘍は食事中や食後、十二指腸潰瘍は空腹時)、胸焼け、食欲不振、腹部膨満感
治療法:薬物療法
関連する病気: 胃・十二指腸潰瘍

(3)過敏性腸症候群

検査をしても腸に異常は見つからないのに、下痢を繰り返すことがあります。この場合は過敏性腸症候群かもしれません。これはストレスによって自律神経が乱れたことが原因で起こり、下痢を繰り返すもの、便秘を繰り返すもの、下痢と便秘を交互に繰り返すものという3タイプがあります。困った時には、下痢止めの薬や便秘薬を使用するのも良いかもしれませんが、根本的に病気を解決しようと思ったら、ストレス対策が不可欠。胃腸科や消化器内科で受診して、過敏性腸症候群と診断された場合は、心療内科も訪れるなどして、ストレスマネジメントやセルフケアについても考えてみましょう。

原因:ストレス
チェック法:腹痛を伴う下痢または便秘が慢性的に続く、腹部膨満感、腹鳴、頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如
治療法:生活・食事指導、薬物療法、心身医学的治療
関連する病気: 過敏性腸症候群

突然の腹痛や下痢! 覚えておきたいセルフケア

ストレスによって起こる胃痛や下痢には、これらのようにしっかり病気と診断されるものもありますが、病名がつかない場合もたくさんあります。むしろ、自分でも気づかないうちにストレスを抱えている場合は、胃痛や下痢も日常的に起こっていて、特に気にしていないということもあるのではないでしょうか。とはいえ、突然腹痛や下痢が起こったらやはり困りますし、生活の質も下がってしまいます。そこで、普段から手軽にできるセルフケアをご紹介します。いつもと少し意識を変えるだけで、痛みを改善できるかもしれません。

(1)痛みを感じたら、腹式呼吸を繰り返す

通常の呼吸は胸で息を吸ったり吐いたりする胸式呼吸ですが、お腹をしっかり動かせながら行う腹式呼吸には、自律神経の働きを整え、心をリラックスる働きがあります。突然、腹痛や下痢が起こったら目を閉じて、腹式呼吸をしてみましょう。できるだけ吐く息と吸う息の長さを同じにして、ゆっくり呼吸を行うのがポイントです。それだけで痛みが和らぎ、心が落ち着いてくる感覚が得られるかもしれません。

(2)ゆっくり休む

仕事の手を休め、ゆっくり休息してみましょう。可能なら、横になってみるのも良いでしょう。休養は、ストレス対策の特効薬。脳もリラックスし、自律神経の働きも正常になって、痛みも和らいでくるはずです。

(3)胃にやさしい食生活を心がける

脂っぽいものや辛いものは胃腸に大きな負担となります。また、コーヒーやお茶に含まれるカフェインも、胃腸にとって刺激になることもありますから、痛みが続く場合、できるだけこれらの食品は控えるようにしましょう。反対に、牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、胃の粘膜を助ける働きがあるので、適度にとりましょう。また、冷たいものも胃腸に刺激となるので、温かく調理されたものをとりましょう。

(4)できるだけ空腹の時間を長くしない

空腹の時間が長いと、胃酸が胃の粘膜を刺激してしまいます。できるだけ空腹の時間を長くせず、1日3食決まった時間にとるなど、規則正しい食生活を心がけましょう。また、食事の時には早食いをせず、ゆっくりよく噛むことも大切です。

(5)暴飲暴食は避ける

胃腸に大きな負担となるのが、暴飲暴食。たくさんの食べものをとると、胃は食べものを消化するために、大量の胃酸を分泌しなければなりません。これが胃の粘膜を刺激してしまうのです。うっかり暴飲暴食をしてしまったら、翌日は胃にやさしい食べ物で体をいたわりましょう。

【まとめ】

胃や腸のトラブルは決して珍しいものではありませんし、おそらくほとんどの人が経験しているはず。しばらく安静にしていると症状が治るものも多いのですが、放置しておくと重症化し、異なる病気を引き起こすこともあります。症状が繰り返す場合は早めに医師に相談した方が良いでしょう。また、同時に考えたいのがストレスの対処法。心療内科で適切な指示を仰ぐことも必要かもしれませんが、まずは自分がストレスを感じていることに気づき、趣味を見つけて気分転換したりストレスを解消したり、環境を変える努力をしたりすることも必要です。自分の考え方や生き方を改めて考えてみることも、治癒の助けになるかもしれません。

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