立ち上がったり、少し歩いたりするだけで、ズキンとくる膝の痛み。体の中にあるたくさんの関節のうち、膝はもっとも傷めやすい部位のひとつと言われています。膝の痛みといっても実態はさまざまで、普段から膝が重だるく感じられたり、動いた時にズキズキと痛んだり、どこか違和感が感じられたりする人もいるでしょう。では、膝の痛みや違和感の原因には、どんなものが考えられるのでしょうか。ここでは病気の可能性について、考えてみます。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

加齢に伴う膝の痛み、考えられるのはこの病気

年齢を重ねるにつれ、膝の痛みを感じる人の数が増えてきます。主な原因は、筋力の低下。特に、膝関節を曲げ伸ばしするのに必要な大腿四頭筋やハムストリングスと呼ばれる筋肉が弱くなると、運動時など、膝に過剰な負担がかかるようになります。また、運動不足などで膝をあまり使わなくなると、膝関節の新陳代謝が滞り、関節が硬くなってしまいます。このように、膝痛は加齢とともに現れることがあります。それほど重症でないなら、適度な運動を行ったり、マッサージをしたりすることで痛みが解消されますが、膝痛が長く続く場合には、次のような病気が疑われます。

(1)変形性膝関節症

高齢者になるほど多くみられる病気で、男女比は1:4。初期には立ち上がりが困難になったり、歩き始めなど、動作を開始する時に痛みがみられたりします。始めの頃は、休めば痛みが解消されますが、症状がひどくなると正座や階段の昇降が辛くなり、末期になると膝を伸ばすことができないようになり、歩行が困難になってしまいます。関節軟骨の老化が原因となって起こる場合が多く、肥満や遺伝も発症の要因になります。膝の痛みや腫れが長く続いたり、正座ができないなどの症状が見られたりする場合は、整形外科を受診するようにしましょう。

原因:関節軟骨の老化
チェック法:膝のこわばり、膝の痛み、炎症、歩行困難
治療法:薬物療法、理学療法、外科治療

関連する病気: 変形性膝関節症

(2)偽痛風

偽痛風とは、突然関節や関節周囲が赤く腫れ、急性の炎症を起こす病気。60歳以降に多く見られ、発作の症状が痛風に似ていることから、この名がつきました。通常の痛風は尿酸塩の結晶が関節に炎症を起こして発症しますが、偽痛風はピロリン酸カルシウムの結晶によって起こります。痛風は足の親指の付け根の関節に起こることが多いのですが、偽痛風は全身のさまざまな関節で発症。特に、肩、肘、手首、膝などによく起こります。関節の腫れのほか、痛み、発赤、熱感などが見られることもあります。それほど重篤になるケースは多くありませんが、痛みがひどいようなら整形外科を受診した方が良いでしょう。治療が早ければ2、3日で楽になることもあります。

原因:ピロリン酸カルシウムの結晶
チェック方法:関節の急性炎症、痛み、熱感
治療法:薬物療法

関連する病気: 偽痛風

外科的原因で起こる膝の痛みとは?

骨や関節、軟骨の問題で起こる膝の痛みには、一体どんなものがあるのでしょう。外科的要因で起こるケースについて、見てみます。

(1)スポーツ障害

スポーツ障害とはスポーツで膝を使いすぎたことが原因で発症する症状のこと。膝や靭帯などの関節周辺が炎症を起こしたり、組織自体が変性したりすることが例として挙げられます。これらのうち、膝の痛みを引き起こすものとしてよく見られるのは、膝半月板損傷や膝前十字靭帯損傷です。半月板とは膝関節の中にあり、太ももの骨すねの骨の間にある軟骨です。関節にかかる負担を減らすクッションの役割や関節を安定させる役割を担っています。膝をねじったときなどにこの半月板を損傷しやすく、初期には膝の曲げ伸ばしのときに引っかかりを感じるようになり、ひどくなると膝の曲げ伸ばしが困難になり、歩行も難しくなります。一方、膝前十字靭帯損傷は、膝関節の中にあり、膝の安定性を保つのに重要な働きをしている前十字靭帯が、膝関節に異常な力がかかったことによって損傷を受けた状態のこと。発症すると、関節を動かす時や体重をかけた時に痛みを感じることが多くあります。このように、膝の関節を構成している骨や半月板、靭帯などに障害や損傷があることを、総称して「膝内障」と呼びます。それぞれの症状によって治療法は異なり、必ずしも手術が必要となるわけではありませんが、その後に後遺症を残さないためにも、速やかに整形外科の治療を受けた方が良いでしょう。

原因:スポーツ外傷・スポーツ障害
チェック方法:膝の違和感、痛み、曲げ伸ばし困難、歩行困難
治療法:薬物療法、外科手術

関連する病気: スポーツ外傷・スポーツ障害 膝内障

(2)関節内遊離体(関節ねずみ)

関節内に骨や軟骨片などの遊離体があり、この遊離体が関節内を移動する時に関節内で引っかかり、痛みを引き起こす場合があります。遊離体が発生する原因には骨軟骨骨折、滑膜骨軟骨腫症、剥離性骨軟骨炎、変形性関節症などがあります。この遊離体が関節内で引っかかると、突然膝の曲げ伸ばしができなくなったり、膝の関節の中に何かが挟まっているような違和感を感じたりします。さらに、運動やスポーツをしたときに脱臼のような痛みを感じたり、膝に水がたまったりすることもあります。遊離体をそのままにしておくと、半月板などを損傷してしまう危険性があるため、おかしいなと思ったら、整形外科で診察を受けると良いでしょう。治療は遊離体の大きさなどによって異なり、骨片が大きければ外科手術によって除去したり、骨片を整復したりすることもありますが、骨片が小さければそのまま放置して経過を観察するということもあります。

原因:骨軟骨骨折、滑膜骨軟骨腫症、剥離性骨軟骨炎、変形性関節症
チェック方法:突然の関節痛、違和感、不安定感、運動スポーツ時の痛み、関節水腫
治療法:外科手術

関連する病気: 関節内遊離体(関節ねずみ)

命に関わることも! 早めに診察を受けた方が良い膝の痛み

膝の痛みは、必ずしも外科的要因によって起こるわけではありません。なかには命に関わる重篤な病気が隠れている場合もあります。重症化しないように、早めに治療を開始しましょう。

・骨肉腫

骨に発生する悪性腫瘍(がん)の中で、もっとも頻度の高いもの。10代の思春期に多く発生するとされていますが、最近は50〜60代にもみられるようになりました。大腿骨や脛骨(すねの骨)、膝関節、肩関節に近いところで発症するケースが多く、痛みと腫れが初期症状として現れます。放置すると血流にのって肺に転移することもあるため、早めに治療を開始することが大切です。進行すると歩行障害、全身障害、全身倦怠感、脱力感、発熱などもみられます。

チェック方法:関節の痛み、腫れ、歩行障害、全身倦怠感、脱力感、発熱
治療法:薬物療法、外科手術

関連する病気: 骨肉腫

【まとめ】

膝の痛みといっても、放置しておけば自然と症状が軽くなるものもあれば、骨肉腫のように命に関わるものもあります。自己判断せず、膝の痛みや違和感を感じたら、できるだけ早めに整形外科の診断を受けましょう。また、膝に限らず体の関節は、使わなければ動きが悪くなり、硬くなってしまいます。無理のない範囲で毎日体を動かしたり、筋力トレーニングやストレッチをしたりして、日頃から関節の動きをなめらかにしておくことも大切です。

【膝が痛い・関節痛】膝の痛みや違和感の原因となる5つの病気の詳細

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