下腹部のあたりがシクシクする、あるいは、重い感じがして体がだるい。女性なら誰もが一度はそんな辛さを感じたことがあるのではないでしょうか。少し安静にしていれば、すぐに治る痛みならそれほど心配する必要はありませんが、そうした痛みをたびたび繰り返したり、安静にしても治らなかったりする場合は、もしかしたら何かの病気の前兆かもしれません。ここでは、下腹部や子宮のあたりが痛くなる女性特有の病気について、緊急性の高いものから解説。いざという時に正しい対処を取るための目安にしてください。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

できるだけ早めに医師の診断を受けたほうが良い病気

次のような症状が見られた場合、治療の開始が遅れると重症化する危険があります。早めに婦人科で診察を受けましょう。

1)左右どちらかの下腹部が痛む。スカートやズボンが最近、きつくなってきた

もっともわかりやすい症状が、左右どちらかが痛む下腹部痛です。また、スカートやズボンをはくときにきつくなってきたと感じる人も多くいます。こうした変化が見られたら、卵巣腫瘍かもしれません。卵巣は子宮の左右に一つずつあり、通常は直径2〜3cm程度のサイズです。この卵巣が腫れた状態を卵巣腫瘍といい、腫瘍の種類によってさまざまなタイプに分類されます。もっとも一般的なのが、卵巣のなかに液体成分がたまって腫れる嚢胞性腫瘍です。ほとんどが良性なので、適切な処置を施せば重篤な症状に至ることはあまりありません。しかし、悪性卵巣腫瘍(卵巣がん)の場合は初期なら完治率も高いのですが、進行している場合は根治が難しく、また再発率も高くなります。ウエストサイズが大きくなり、下腹部痛や不正出血などが見られたら、単に太っただけと自己判断せず、婦人科で診察を受けましょう。

原因:卵巣腫瘍

チェック方法:腹部膨満感、下腹部痛、性器出血、便秘、頻尿、ウエストサイズが大きくなる

治療法:外科手術、薬物療法

関連する病気: 卵巣腫瘍

2)急激な下腹部痛。不正出血も始まり、時間とともに出血量が増えていく

急激な下腹部痛に加えて不正出血が見られる場合は、子宮外妊娠を疑う必要があります。これは、本来なら子宮内膜に着床すべき受精卵が、子宮内膜以外の場所に着床した状態のこと。卵巣と子宮を繋ぐ卵管で起こる「卵管妊娠」がもっとも多く、そのほか、腹膜や卵巣、子宮などで起こるケースもあります。妊娠検査薬で陽性反応が出た場合、妊娠5〜6週目以降にエコー検査を受けて、子宮内に赤ちゃんを包む胎嚢が確認できれば、正常の妊娠であることがわかります。しかし、ここで胎嚢が確認できなければ子宮外妊娠の可能性もあります。子宮外妊娠の場合、その場所で流産が起こったり、卵管が破裂したりして、大量出血の恐れもあります。不正出血や下腹部痛などが見られたら、速やかに医師の診断を受けましょう。

原因:子宮外妊娠

チェック方法:下腹部痛、不正出血

治療法:外科手術

関連する病気: 子宮外妊娠

3)妊娠22週未満の期間、少量の不正出血と下腹部痛がある

一般に、妊娠初期には不正出血が見られることもあるため、油断しがちなのですが、もしかしたら切迫流産かもしれません。これは、「妊娠22週未満で、流産をしかけている状態」のこと。まだ流産をしたわけではないため、胎児の心拍が確認できれば流産せずに済む場合もあります。原因としては、胎児の染色体異常などさまざまなものが挙げられますが、原因が不明な場合もあります。切迫流産と診断された場合、残念ながら有効な治療法は特にありません。しかし、安静にして過ごすことで、流産のリスクを下げることがわかっているため、自宅または病院で静かに過ごすことが大切です。

原因:切迫流産

チェック方法:少量の不正出血、下腹部痛

治療法:安静にする

関連する病気: 切迫流産

4)発熱や下腹部痛のほか、おりものの増加や膿の混ざった分泌物が見られる

下腹部痛と発熱が起こり、さらにおりものが増えたり、膿の混ざった分泌物がでたりする場合は、子宮付属器炎かもしれません。これは細菌などの感染によって、子宮内膜や卵管卵巣などの付属器に炎症が生じた病気のこと。卵巣チョコレート嚢胞や悪性の子宮筋腫を引き起こしやすく、また、不妊や子宮外妊娠の原因にもなります。なるべく早く婦人科を受診しましょう。

原因:子宮付属器炎

治療法:薬物療法

チェック方法:下腹部痛、発熱、気分不快、嘔吐、おりものの増加、膿の混ざった分泌物

関連する病気: 子宮付属器炎

下腹部痛は月経困難症が原因かも。月経困難症を引き起こしやすい病気とは?

現在、多くの女性が月経困難症で悩んでいます。月経困難症とは、月経時に下腹部痛や腰痛などの痛みが出たり、食欲不振や憂うつなど、精神面でのトラブルを起こしたりします。月経困難症の原因はさまざまですが、中には疾患が原因となって起こることも。ここでは、月経困難症を伴う一般的な疾患を挙げてみます。

1)特に、月経時の下腹部痛や腰痛などがひどい。そのほか、性交痛や排尿痛、血尿などが見られることもある

月経時の下腹部痛や腰痛などがひどく、日常生活に支障をきたすほどというレベルであれば、子宮内膜症の疑いがあります。これは、子宮内膜の組織が子宮内以外の場所(卵管、卵巣など)にできる病気のこと。そのうち、卵巣に子宮内膜症ができた場合は「チョコレート嚢腫」と呼ばれます。特に、20〜40代の女性に発症しやすいとされており、悪化すると不妊の原因になることも。進行は非常にゆっくりで、治療にも時間が必要なため、長い期間かけて病気と付き合っていく姿勢が必要です。特に妊娠を望む場合は、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。

原因:子宮内膜症

チェック方法:月経時の下腹部痛や腰痛がひどい、性交痛、排尿痛、血尿

治療法:薬物療法、外科手術

関連する病気: 子宮内膜症

2)月経量が増えた。月経時に下腹部痛がある。不正出血、貧血、息切れ

月経の出血量が増え、その結果、貧血やめまい、動悸、息切れなどを引き起こすことがあります。この場合は、子宮筋腫を疑います。子宮筋腫とは、子宮筋層にできる良性腫瘍のこと。成人女性の4人にひとりが持っているとされ、小さな筋腫であれば症状も乏しいため、気づかない人も少なくありません。しかし放置すると筋腫が大きくなり、不妊や流産、早産の原因になることも。また、大きくなると周囲の臓器を圧迫して、腰痛、頻尿、便秘、下腹部の痛みを起こすこともあります。必ずしも治療が必要なものではありませんが、不快な症状が強かったり、不妊の原因になっていると考えられたり、悪性であることが否定できなかったりする場合は、外科手術によって筋腫を摘出することもあります。

原因:子宮筋腫

チェック方法:月経過多、下腹部痛、不正出血、貧血、めまい、動悸、息切れ

治療法:外科手術、薬物療法

関連する病気: 子宮筋腫

3)月経過多で、月経痛がひどい。特に、年々月経痛がひどくなってきて、貧血もある

経血量が多く、月経痛がひどいのは子宮筋腫など、他の疾患と似ています。しかし、月経時の痛みが年々ひどくなってきたり、日常生活に差し障りがでるほどの出血量だったりする場合は、子宮腺筋症かもしれません。実際は、子宮筋腫と合併して発症するケースも多いのですが、両者では治療法が明確に異なるため、的確な診断と治療が必要になります。子宮腺筋症とは、子宮内膜やその類似組織が子宮筋層内に発生する病気のこと。子宮内膜症と似ていますが、子宮内膜症は子宮以外に子宮内膜に似た組織ができますが、子宮腺筋症の場合は子宮の壁の部分である子宮筋層にできるのが特徴です。その結果、子宮全体が肥大化し、不妊の原因になることもあります。また、子宮筋腫は筋腫を取り除く手術が可能ですが、子宮腺筋症の場合は正常な部分と病巣部の境界が曖昧なため、子宮を全摘出する方法がとられます。妊娠を希望する場合はホルモン療法を行うなどの代替案をとることもあるので、自分のライフプランと合わせ、医師に相談してみましょう。

原因:子宮腺筋症

チェック方法:月経過多、下腹部痛

治療法:外科手術、薬物療法

関連する病気: 子宮腺筋症

【まとめ】

元来、女性の体は非常にデリケートにできています。特に、月経が始まってから終わるまでの数日間は、下腹部痛や腰痛、貧血などで悩まされる人も多いと思います。そうした月経困難には、大きな病気が隠れていることもありますから、当たり前のものと諦めず、気になる場合は一度医師による診断を仰ぐことをお勧めします。また、何も病気が見つからないとしても、ピルの服用などで月経困難を軽減することは可能です。憂うつなことの多い月経時も、ストレスフリーで過ごしたいですね。

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